『誤解』A・カミュ作
近ごろはセイン・カミュの方が有名だけれどね。
マルタとマリヤという名前を聞くと、聖書に出てくるラザロの姉妹の二人を連想する。客人の応対に心を奪われた働き者の姉と、イエスのみ言葉に聞き入った妹という対比。
ここでのマルタはやはり心を閉ざし、自分の仕事の遂行のみに心を奪われている。
マリヤは夫への愛に生きている。
そしてマルタの兄、ジャンは二十年ぶりに戻った家で、マルタと母に肉親だと気付いてもらえずに殺されてしまう。
自分が自分であることとは、どうやって証明されるのか、を確かに考えさせられる。最後のシーンでマリヤが助けを求めた老召使いが「いいえ!」と拒否するところがすごく印象的。
こういう悲劇って心魅かれる。