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「あざみの花咲くころ」ヘルマン・メールス作 岩村行雄訳

刑務所の中庭で繰り広げられる、看守と五人の囚人の物語。
 カミュの短編小説で、門番が門を守っていて、男がどうしてもその門の中に入れてもらえない、という話があったが、その話を思い出した。
 刑務所の外の世界に憧れる男たちと、狭い世界の中で自分の生活を守ろうとする男。
 囚人4と囚人5のコントラストがいい。
 ぐるぐるとただ意味もなく中庭を回り続ける囚人達。そこにいみがあるはずはないのに、意味を見いだそうとする姿は、日常のルーティンワークに疲れている我々の姿のカリカチュアだ。
 つまらない差異を極端に強調することで、自分が何か意味あるものであるように見せようとする。
 そんな悲しい悲喜劇を繰り広げる横で、ひとりそうした世界を超越し、裂け目に芽生えたあざみを慈しむ囚人1。
 しかし、つつましく花を咲かせたあざみも、男たちの乱闘の中であっけなく踏みにじられてしまう。
 途中で空間がどんどんと広がっていくのだが、その手法が、能や狂言を連想させた。