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「狙撃兵の影」

ショーン・オケーシー作 小田島雄志

原題「THE SHADOW OF GUNMAN」。

「GUNMAN」を英和辞書で引いたら、「米俗〕 ピストル所持の悪漢, 殺し屋」と出た。

アイルランドの話だから、アメリカの俗語とは意味が違うのだろうけど、「狙撃兵」という意味があるのだろうか。

下町の安アパートに暮らすアイルランド人の人々。独立運動を背景として、社会の底辺に生きる人々を巡る悲劇を描いている。どうもアイルランドというのは、しょっちゅう雨が降っているようなイメージがぼくにはある。何でだろう。低く垂れ込めた雲の下で、荒涼とした大地が広がっているイメージ。-----

この作品ではいくつかの会話が非常に魅力的だった。

例えば滞納した家賃を取り立てにきた家主と、シェーマスというセールスマンの会話。

家賃を11週分滞納していることに全然悪びれずに、かえって居丈高に家主に食ってかかるシェーマスの虚勢のはり方がいい。

それからミニーとダヴォレンが恋に落ちていくシーン。無学なミニーと詩人のダヴォレンの会話は意味的には噛みあわないが、心理的には高まっていく。無学でも、一人で生きていることに自信と誇りを持っているミニーの姿が愛らしい。

それからグリッグスン夫人とシェーマスの全く噛みあわない会話。

人々が逃亡中の狙撃兵だと勘違いしているのを良いことに、人から尊敬される快感に、自分があたかも狙撃兵であるかのような口ぶりで語るダヴォレン。しかし、イングランドの補助兵が襲ってきたとき、結局偉そうな口を利いていた男たちは誰一人戦うことができず、ミニー一人が敢然と立ち向かい、そして殺されていく。

そこに無学だがまっすぐに生きてきた人間の美しさと、教養はあるが口だけの人間のみじめさが浮き彫りになってくる。