ディベート×演劇

「子どもらが 自分の場だと 思う所に 花が咲く」(徳村彰)を、学校現場で目指します。

一期一会

大会二日目。高校は予選第3試合。この試合の結果で、決勝トーナメントへ行けるかどうかが決まるところも多い。


まずは予選4組、ノートルダム清心女子高校対能代高校の試合をジャッジする。


昨年3位と飛躍的な活躍をしたノートルダム。対する能代は東北大会でこの所優勝を続けている。


両校とも、昨日は一勝一敗だったため、この試合に勝った方が勝ち抜けが決定する。どちらかに引導を渡さなければならない。


ということで、この試合から、フローシートに「一期一会」と書くことにした。先入観にとらわれることなく、今、この試合の時間に両チームが展開する試合を精一杯書き留めて、そして判定を下そうと考えたから。


それにしても、この試合は好ゲームだった。どちらが決勝トーナメントに残ってもおかしくない、それだけの実力を持ち合わせた両チームだった。コミュニケーション点も、僕の採点では、25点満点で肯定側が22点、否定側が24点をつけた。


試合内容も拮抗していた。


メリットは「地震による放射能漏れの防止」、デメリットは「電力不足」と「コストがかかる」。


両チームともすばらしかったのは、専門用語をそのまま使うのではなく、きちんと自分たちの言葉で説明していたこと。肯定側は立論で「メルトダウン」についての説明をしていたし、否定側は反駁の中で「稼働率」の説明をしてくれた。おかげで非常に内容を把握しやすくなった。


この試合、肯定側のプランで代替発電として水力、風力を用い、足りない分は火力発電の稼働率を上げることでまかなうとしていたのだけれど、否定側から稼働率というのは一日のうち何時間動かすのかという割合で、電力ピークの時間の供給電力は増えないという説明が効果的で、「電力不足」がほぼ立論通りの大きさで残った。


対するメリットなのだけれど、マグニチュード7.2の地震で壊れるという立論の資料に対して、マグニチュード7.3の鳥取地震で近くにあった原発に何ら問題はなかったという資料が提示され、かなり弱められてしまった。


また多度津の試験場での実験で配管は壊れなかったという資料が否定1反で出されたのに対して、肯定1はんで熱疲労の資料が出てきたのはちょっと遅かった。立論に入れていれば有効な反駁になっただろうに、残念だった。


肯定側は最強の議論を立論に組み入れていなかったように思う。その分、後から主張していることがかわってきてしまったという印象を与えてしまった。


ということで、能代が勝ち抜け。


ただ、この試合票が割れたのだけれど、割れた理由を聞いたのだけれど、ちょっと納得がいかなかった。


要するに地震が起こることは否定されていないという話なのだけれど、その後の壊れる、漏れるという部分がほとんど残っていないのに、なんでリスクが残ると判断したのかかなり疑問に感じた。


この試合を終えてジャッジ室に戻ったと思ったら続けてもう一試合予選3試合目のジャッジ。


千種対札幌聖心女子。


札幌聖心は2勝していて、この試合千種は勝たないと抜けられない。


しかし、否定側は「あの」佐藤さん、本間さんを擁する聖心。かなり大変。千種に勝機があるとすれば、肯定側ということかな。


まあ、ここもそういった邪念は頭から振り払って「一期一会」の精神でジャッジしました。


メリットは「原発事故の回避」。デメリットは「京都議定書の喪失」。


デメリットなんだけれど、ラベルと内容があっていない。京都議定書の喪失によって、日本が国際的にどういう立場に追い込まれるのか、という話かと思っていたら、温暖化の話だった。


固有性の問題で、立論段階でほとんどとれないな、という感じ。


したがって争点はメリットがどれだけ残るのかという点に集約された。


佐藤さんの第1反駁は、メリットの5カ所について最低2点ずつは反駁してきた。ユニークだったのは東海地震について予知は失敗しており、実際には起こらないという反駁をしてきたところ。


それほど強い反駁ではなかったけれど、その他の部分にもきちんと反駁しており、これを返すのはかなり大変そうだった。


ところが千種の1反は、多分戦略ミスか、上がってしまったのだと思う。CO2の増加が温暖化の原因だという前提に対してそうはいえないのではないか、別の意見もあるよ、という資料を読んだのだが、これが長い長い。


そんなに長々と引用する必要もない質のものだったのだけれど、これを読んでしまったので議論の再構築にかける時間がずいぶん少なくなってしまった。


おまけに、これは僕がいけないのだけれど、プランを実施すれば原発を止められる。しかし、原発を止めて安全になるのは3ヶ月かかる。だから、地震が起こってからでは原発の安全性は確保できないということを言ってくれたのだけれど、ちょっとすんなり頭に入らなかったので、首を傾げてしまったら、それを見てもう一度説明し直してくれた。おかげでますます時間がなくなってしまった。


こうなると、もう本間さんの手のひらの上で転がされるようなものです。


満面の笑みでさらさらと議論をまとめていく本間さん。そのにこやかさが返って凄みに感じられました。


結局、デメリットは評価できなかったのだけれど、メリットもなしで、僕は否定側に投票。それでも1−2に割れる僅差の試合だった。


この試合、感慨深かったのは、一緒に小栗君がジャッジをしたこと。たぶん、中学・高校時代の小栗君の試合をジャッジした回数では、僕が一番じゃなかろうか。練習試合も含めてだけれどね。


そんな彼と並んでジャッジをしていることに、第9回という時間の積み重ねを感じました。