「字」と「文字」の違い
入試問題の解説をする時に、「○○字以内」と「○○文字以内」という表現の説明をする。
僕は「”字”は記号を含む。句読点や「」も含まれる。”文字”は記号を含まない。」という風に教わってきたので、その通りに教えてきた。
しかし、ある参考書に、まったく逆のことが書かれていた。
どっちが正しいのだろう。
まずは辞書で調べてみよう。ウェブ大辞林で調べてみる。
じ 1 【字】(1)言葉を書き表すのに用いる記号。文字。
「―を覚える」
もじ 1 【文字】(1)言語の伝達手段の一つとして使われる符号。点・線などを組み合わせたもの。漢字などの表意文字、ローマ字・仮名などの表音文字に二大別される。文字の起源は事物をかたどった絵にあり、象形文字・表意文字・表音文字へと進んだと考えられる。もんじ。字。
「字」の方は記号という言い方をし、「文字」の方は符号という言い方をしている。「表意文字」「表音文字」という使い方から考えると、文字に句読点などの記号を含めるのは無理な感じがする。
さらに考えてみる。
例えば「10字以内」と「10文字以内」を比べてみる。どっちもありそうな表現である。
では、「600字以内」と「600文字以内」ではどうか。前者は使うけれど、後者の使い方はしない。
「600字以内」と言った場合は、作文や小論文の課題で使われる。この場合、文章を書くことになる。文を続けていくわけだから、句読点も使うし、会話文の「」も使う。段落替えの空白のマスもある。
用法から考えても入試問題の設問では、「字」の方に記号を含めて考えた方がいい感じがする。
では、実際の入試問題ではどのように使っているか。手元にある『全国大学入試問題正解 国語(私立大編)』を見てみる。
「〜。その直前の文末五文字を本文の中から抜き出せ(句読点は字数に含まない)。」「〜ひらがな四文字で記せ。」
「わかりやすく四十字(句読点も含む)以内で説明せよ。
「〜漢字二文字を、自分で考えて記し、〜」
ひらがな、漢字は文字。
「文字」は句読点を含まない。「字」は句読点を含む。注釈がついている所が親切。
「問五 〜レヴィ=ストロースの「異義」の内容を百字以内で記しなさい。」「問六 〜文中から三十五字程度の箇所を抜き出し、最初と最後の五字をそれぞれ記しなさい。」
問題文だけではわからないが、解答を見ると、問五は複数の文からなる答えになっている。問六では「自分が「文〜視点にいる」となっていて「が含まれている。ということで、「字」には記号が含まれる。
獨協大学。
「問四 〜三十字以内で説明せよ。」「問七 〜最初と最後の五文字を〜抜き出せ。」
「問十五 〜二十五字以内で抜き出せ。」
「問十六 〜四十五字以内で述べよ。」
問四は答えに句読点を使っている。問七は句読点はなし。問十五、十六は読点を使っている。つまり、「字」は記号を含み、「文字」は記号を含まない。
青山学院大学法学部。
「問五 〜最初の八字と最後の八字はそれぞれ何か。」
選択肢五つのうち、三つに句点や「が使われている。したがって「字」には記号を含む。
青山学院大学経済学部A。
「問十 〜その文章の最初の五文字(句読点を含む)を記せ。
この使い方は今までとちょっと違う。「文字」には記号を含まないという原則から外れた使い方なので、あえて注釈をつけたとも考えられる。
以上見てきたことをまとめる。
入試問題における「字」と「文字」の違い。1 何の注釈もない場合、「字」=記号を含む。「文字」=記号を含まない。
2 出題者独自の使い方(あるいは確認をしたい)の場合、注釈をつける。
ということで、大体僕が教わってきた分け方でよかったようだ。
確認のため、学習院大学を見てみた。
文学部
「(三) 〜それに相当する十七字を抜き出し、記しなさい。句読点は含めません。」
法学部
「(五) `二十五字以内の語句を本文中から抜き出して答えなさい。句読点は文字数に含めます。」
「字」で統一して、記号を含むかどうかは注釈でコントロールしているということだろうか。2の範囲に入るだろう。
ということで、2の立場だと考えていい。