ディベート×演劇

「子どもらが 自分の場だと 思う所に 花が咲く」(徳村彰)を、学校現場で目指します。

「父帰る」菊池寛

大学で「芸術鑑賞」を受講し、芝居の脚本を書くことに決まった時、教官だった桑原先生に読むようにすすめられたのがこの戯曲だった。

帰りの電車の中で読む。すっかり忘れていたが、関西弁だったのだな。

読み返すと、さすがに上手い。
20年前に家出をした父が帰ってくる。年老いて気弱になった母は、そんな父を迎え入れるが、8才で生き別れになった長男は、父の家出の後、母が一家心中を謀って失敗したこと、10才の時から奉公に出て辛酸をなめ尽くしたこと、母から「苦労するのはお父さんのせいだ、お父さんを憎め」と言われて成長してきたことなどを挙げて、父に激しくくってかかる。

20年前には幼くて覚えていない次男は、父を受け入れようとするが、長男はなおも激しく拒絶する。母と妹はただ泣くばかり。

父は長男との口論に負け、うちひしがれて家を出ようとする。その時、家の敷き居が高くて三日も外から眺めていたこと、おわびのために幾らかでも金をこしらえて戻ってきたかったが果たせなかったことなどを言い残して立ち去る。

暫くして、長男は次男に父を連れ戻すよう命じる。走り出る次男。しかし、父を見失ったと戻ってくる。「なに見えん!見えん事があるものか。」と狂ったように家を走り出る長男と次男。芝居はここで終わる。

切ろうと思ってもきれない肉親の情を感じさせるこの幕切れが好きだ。台詞にむだがない。名作と言っていいだろう。