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「修善寺物語」岡本綺堂

面作師夜叉王は、修善寺に住んでいる。鎌倉幕府第二大将軍頼家は北條時政との権力争いに破れ、この地に幽閉されている。頼家は夜叉王に、自分の顔の面を作れと命じる。希代の面作師夜叉王は、半年の間、頼家の面作りに没頭するが、思い通りの面が作れない。作っても作っても、いつものような生気が仮面に表れず、不吉な死相が表れてしまうのだ。

ある日、業を煮やした頼家は、お忍びで夜叉王の家にやってきて面の催促をする。しかし、中途半端な作品は作れない、いつできるか約束はできない、と頼家の要求を突っぱねる夜叉王。激怒した頼家は刀に手をかけ、夜叉王を切って捨てようとする。

その時、夜叉王の長女、桂が進みでて、昨日完成した仮面を手渡す。夜叉王は失敗作だと言うが、頼家は気に入ったと言ってそれを持ち帰り、桂も自分の側に置きたいと言う。桂は田舎住まいから抜け出したいという強烈な上昇志向を持つ女性で、進んで頼家に従って行く。

しかし、時政からの刺客が頼家を襲い、頼家は敢え無く切り死に、頼家の面を冠り、身替わりとして奮闘した桂の働きも空しいものとなる。

しかし、傷つき息も絶え絶えに自宅へと戻ってきた桂を前にして、夜叉王は自分の腕に天与の力が備わり、頼家の死に行く運命が誰よりも早く、自分の作った仮面に表れた事に快哉を叫ぶ。そして死に行く娘の顔に表れた死相に新たな創作意欲を刺激され、絵筆をとってその表情を写し取って行く…。

夜叉王という面作師の芸術史上主義の生きざまと、娘桂の上昇志向の生きざまが壮烈。まさに夜叉のごときたけだけしさをうちに秘めた親子ではある。

夜叉王は妹の楓の方が父親似だとして、妹を可愛がっていたと述懐するのだが、その生きざまの激しさは、むしろ桂の方がよく似ている。

コルシカの男、マテオ・ファルコネを思い出す。