ディベート×演劇

「子どもらが 自分の場だと 思う所に 花が咲く」(徳村彰)を、学校現場で目指します。

ポストイット!

いよいよ全国大会出場をかけての大一番を迎えた。

相手は、富士見市立本郷中学校・・・。できれば、一番当たりたくなかった所だ。

実を言うと、僕は本郷中学校のファンである。去年のチームが実にいいチームだった。全国大会3位、ベストコミュニケーション賞受賞。わかりやすく、丁寧な試合運びが印象的だった。

川畑先生とはディベート合宿in熱川以来の同志である。

今回も、決勝まであたらないということで、情報を教えていただいていたりした。

だから、決勝戦でお会いしたかった。実にフクザツである。

今年は春季大会で一回勝っている。とはいえ、その時は現高1のメンバーだったし、まだ議論も荒削りだった。

ここまで否定側で二連勝した勢いで、否定側でいきたいな、と考えていた。

ところが、じゃんけんで勝ってしまった。向うは大喜びである。たぶん、否定側の方が自信があるのだろう。

直前の試合のフローを高校生たちが取ってきてくれていた。

デメリットは2つ、「レジ袋業者の利益損失」と「万引きが見分けにくい」だ。

デメリットの1はオンラインディベートで見た記憶があった。

実はこのデメリットだけは対策を立てていなかった。なので、ちょっと焦る。

ただ、フローを見ると、レジ袋業者が大きなダメージを受けるという話なのだが、レジ袋業者って、レジ袋だけ作っているわけではなかろう。資料として使っているのは、おなじみのPOFのサイトだ。

ということで、みんなで、まず質疑でレジ袋業者がポリ袋以外にも作っていることを確認し、反駁でレジ袋がなくなった分、他の製品を作るだけだから打撃はない、という反駁をしようということになった。

デメリット2の「万引きが見分けにくくなる」に対しては、ある程度準備をしていたので、それを使おうという戦略を立てた。

こうして試合が始まった。

立論をK’さんが読み終わった段階で、フローシートに「この子たちはスゴイ!」とメモをした。

なぜなら、最初の試合で、緊張のあまり、ものすごい早口で読んでしまって、相手から「早すぎる」と反駁で言われてしまった彼女が、今までの審判のアドバイスを入れて、きちんと強調すべき所を強調し、そして、時間通りに読み終わったのだ。

もうこれだけで感動してしまった。

質疑も一点ちょっと答え方をミスしたが、創価中との試合の教訓を生かして、そつなくこなしてくれた。

相手の立論。これがまたほれぼれするようないい声。実に見事だ。去年のベストコミュニケーションの流れをしっかり汲んでいる。

さて、質疑である。

これも、見事だった。

相手の資料を確認して、「レジ袋はもらわなくなるんですね。」とこちらのメリットが確実に起こることの伏線を張る。

「レジ袋業者はレジ袋だけを作っているのですか」と聞いて、「他にも色々作っています」と反駁のための情報を引き出す。

「万引きは現在でも起こってますよね」

「買い物をする時はかごを持って買い物をしますよね」

「いきなりマイバッグにいれたりしませんよね」

と聞いて、「いえ、かごではなく、手に持つこともあります」という答えを受けて、「でも、手に持つことと、マイバッグに入れることとは違いますよね」とさらに確認をして行った。

実に見事な、ムダのない質疑だった。

そしてここから、立論と質疑の二人の活躍が始まる。

これまでの試合で、反駁の二人がけっこうプレッシャーを受けて頭が真っ白になることを経験してきた。

それで、試合の合間に、折に触れて立論と質疑が自分のステージが終わったら何をするか、を話してきた。大きく2つ。

一つは「ジャッジを観察する」ということ。

ジャッジはそれぞれの発言に対して、うんうんうなずいたり、はてなと首をひねったりしている。

だから、どの議論の時にどんな反応をしたかを観察して、反駁担当者にアドバイスを送れ、というもの。

これは具体的なアドバイスでなくてもいい。ただ、「ここはうなずいていたよ」とか「首かしげていたよ」だけでもいい。それだけで反駁の目安になるものだ。

もう一つは「ここは反駁した方がいいよ」と具体的にアドバイスを送れというもの。

結構テンパっていると議論が見えなくなる。そんな時に、自分の役目が終わっていると、客観的に議論が聞けるものだ。だから、そうした目で「ここは反駁しないとまずい」、とか「この資料を使った方がいい」とかアドバイスをしてご覧、と言っておいた。

もちろん、言ったからといってすぐにできることではない。

ところが、これをやろうとしてくれた。

まず立論のK’さん。ジャッジの観察を始めた。試合の後でも僕にそれを見せてくれて、「否定側の反駁の時には二人が首を傾げていて、こっちが万引きについて話した時には全員がウンウンうなずいてました」などと教えてくれた。

そして質疑のIさん。彼女は準備時間にポストイットを取り出して、メモを欠いて第二反駁に渡し始めた。

実は前の試合でもアドバイスをしようとはしたのだけれど、口頭だとうまく伝わらなかったらしい。そこで、彼女はポストイットに書いて送ることを思いついたのだ。これは池田さんのチームが使っていたのを見て参考にしたのかもしれない。

フローのメモには「Iさんはドライバーになれる」と書いてある。チームとしての流れをコントロールする役目のことだ。

さて、否定側の第1反駁に入った。

メリットに対して3つの反駁があった。

しかし。申し訳ないけれど、戦略ミスだったように思う。いわゆる「潰す議論」を仕掛けてこなかった。

名越さんが「分からない」では分からない!で述べているように、メリットの大きさへの疑問は提示されたけれど、メリットが起こらないという反駁はなかった。

これで、肯定側第1反駁は楽になった。

と言っても、メリットの3点への反駁のうち、ちゃんと答えたのは1つだけなのだが、それは質疑でも確認していた、メリットが発生する根拠は否定されていないという一番重要な部分だった。

万引きに関しては資料付きで1点、その他に2点反駁した。

ここでも、創価にやられたことをやり返すかのように「相手の実例は実施したからではなく、ただの1例にしか過ぎない」という反駁をしていた。

デメリット1には、質疑と連動して、レジ袋業者はポリ袋をつくっているだけで、レジ袋専門の業者ではないので、打撃は大きくないという反駁を展開した。

そして、否定側第二反駁。おそらくデメリット1に関して、うちのような反駁が行われることは想定していたのだろう。

資料付きで現状が苦しいので、他のものを作る余裕はないという反駁をしてきた。しかし、メリットに関しては第一反駁の確認だけだったので、削られてはいないな、と見た。

いよいよ第二反駁である。創価との試合で「足手まといになっているみたいで・・・」と泣いていたKさんである。

しかし、今回はIさんがポストイットでメモも送ってくれた。K’さんが審判の反応も確認してくれた。

そうしてスピーチ開始である。

やっぱりちょっと自信なさそうである。発言しようとして「すいません・・・」とやめてしまう。

このまま時間が過ぎて行くのか。

しかし、デメリット1について、二点反駁を返した。

デメリット2にも第一反駁でターンした議論を引っ張った。

引っ張った時に、メリットの大きさを確認した。

ということで、なんとか、やるべきポイントは抑えて終えることができた。

審判の判定を待つ間、生徒たちにはフローを見せながら、デメリット1の大きさをどう取るかで、勝敗が決まる、という話をしていた。

審判は時間通りに戻ってきた。

主審は久保君である。

「久保君」と言っては申し訳ないくらい、現在ディベート界の牽引役をになってくれている優秀な人材である。

彼の講評と判定はいつもすばらしい。去年も彼の講評、判定を聞いて、「ここまでしっかり取ってくれたのなら、仕方がないな」、と納得することができた。

今回も生徒たちにこの論題を通して学んだことは決してムダにはならない、環境問題に目を開かれたということの大切さを胸に刻んでほしいという心に残るメッセージをしてくれた。

そして、判定。メリットはやはりつぶす反駁がなかったため、ほとんど残っていた。発生するという根拠の部分を守ったのを「肯定側にうまく逃げられた」と表現していたけれど、第一反駁が効いたわけだ。

デメリット2はこちらの厚い反駁で、かなり深刻性が小さい、レアなケースというところまで小さくできた。

問題はデメリット1である。ある程度の有効性はあったが、これもまったくないということにはできていなかった。

生徒に予告した通り、メリットと、デメリット1で、どちらが大きいと判断したジャッジが多かったか、ということになった。

結果、3−0で女子聖学院の勝利。

審判が来るまでの時間で、生徒たち一人一人には、今日5試合を戦って、自分がバージョンアップしたことが実感できたでしょ、と聞いてみた。みんな目を輝かせてうなずいてくれた。

もう、それだけで大収穫の一日だった。その上に、第5代表の座も獲得できた。

型から抜け出て、自分達で議論を組み立てて、試合をして行くことの面白さに気づいてくれたと思う。

5試合もの真剣勝負。肯定側で3試合、否定側で2試合。バランスの面でも理想的な試合ができた。

さらにさらに、審判の皆さんの講評で、これからどう修正して行ったらいいかの道筋も見えてきた。

これをもとにして、これから、またバージョンアップしていきましょう。