ディベート×演劇

「子どもらが 自分の場だと 思う所に 花が咲く」(徳村彰)を、学校現場で目指します。

初めての他者体験

かつて田近洵ー先生は芥川龍之介の『トロッコ』を評して「初めての他者体験」と喝破された。

「われはもう帰んな。俺たちは今日は向こう泊まりだから。」
「あんまり帰りが遅くなるとわれのうちでも心配するずら。」
良平は一瞬間あっけにとられた。もうかれこれ暗くなること、去年の暮れ母と岩村まで来たが、今日の道はその三、四倍あること、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならないこと――そういうことが一時に分かったのである。(『トロッコ』芥川龍之介)


おそらく、4組のトップバッターで出てきた4班のBさん役は、良平に近い衝撃を受けたんじゃないかと思う。

飛行機の中という設定でこーちゃんの目の前でCさんが倒れた。

お願いすれば立ち上がって助けに来てくれる。

そう信じていたのに、立ち上がらない。

その一瞬間のBさんの頭の中で行き交った疑問、衝撃、とまどい、怖れが見えるようだった。

思わず流した涙はそうした様々な意味が込められていた。

1組も4組も9グループすべて、こーちゃんを立たせることはできなかった。

しかし、こーちゃんの総括後のふり返り、次回の作戦タイムでの話し合いがよかった。

今日も参観してくれた管理職が、「みんな頭の中が動いてる」と評してくれた。

そう。

1組と4組ではワークショップの説明で、「この授業は演劇の手法を使った話し合いの授業です。」ということを明示していた。

目的を達成するためにいかに質のいい話し合いができるか。
それぞれのグループのアイデアや、フォローのコメントからどれだけ学べるか。

終礼でもまだ「あー、いらつく」とつぶやいている生徒がいた。

3時間目に授業があって、1時間他教科を受けたのにまだ残っている。

自分の思い描いた通りに行動しない「他者」が存在することが、かくも生徒たちの中でインパクトを与えるものなのか。

月曜日の本番、どうその他者との関係を作ることができるだろう。

たまたまだけれど授業参観日でもある。2、3名保護者が参観することの影響をできるだけ小さくしてあげたい。

何人かの生徒には、講師の皆さんが誉めていたことも伝えることができた。

1組でタクシーの運転手をやった生徒は、ちょうど下校で校舎を出る所で会った。

「ワークショップすごと楽しいです。演劇部じゃないけどまたやって下さい。」

立たせることはできなかったけれど、みんな次回の本番に前向きになっているのがうれしい。