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東北大会感想2

かつて、ベスト16で破れはしたが、下館第一と白熱の試合を展開したチームに対して、「どうしたらこんなチームを育てることが出来るんですか?」と試合後に言われたことがあった。

今回、同じ質問を、河東中学校の藤田先生に投げかけた。

「論題について、じっくりと考えることが大切でしょうか」

先生の答えは至極真っ当なものだった。

とにかく、ジャッジをしていて、こんなに頭を悩ませる試合というのは珍しかった。

とっちらかってしまって、頭を悩ませるのではない。勝負が拮抗していて、どちらの反駁もすばらしいので、どこでどう勝ちを決めたらいいのか、それに悩んでしまったのだった。

試合をふり返ってみよう。

肯定側、河東町立河東中、否定側、会津若松市立第二中。

会津からは会津高校も含め、3校が全国大会に出場する。渡辺徹さんが、「チームフジタ」と呼んでいたけれど、藤田先生のまかれた種が、着実に身を結んでいる。

こんな地域は、全国で他には、筑西市くらいしかないだろう。(筑西市からは下館南と下館第一高校が出場。来年は中澤さんの異動した筑西市立明野中学校も強豪校なってくるに違いない)

とにかく、練習試合も行い、手の内を知り尽くしている二校だけに、白熱した試合が予想された。

試合中、フローをとりながら、4色ボールペンの中の緑色で、気がついたことをメモしているのだが、立論のプランの所に、「さすが藤田さん」と書き込みがしてある。

プランの補足で、「小売店によるレジ袋の無料配布を禁止する」というのが入っていたのだ。

これで、うちのデメリット「小売店の負担増」の発生過程の一つの流れが切られてしまうし、反駁で「無料配布が行われるからレジ袋の使用量が減らない」というのも使えなくなってしまう。

たしかに税をかけるのだから、その効果が有効になるようにこうした措置はとられるだろうしね。当たり前と言えば当たり前なのですが。関東甲信越大会の時には思い至りませんでした。これ入れとけば、創価にも勝てたかな。

メリットは「ゴミの減量」。

発生過程は3つ。1点目、現状でゴミの中のレジ袋の量が容積で7.3%を占めており、プランを導入することで、5%以上減らすことが出来るという議論。

レジ袋の場合、使っていないものは重ねてペッタリ置いておけるけれど、ゴミになるとやたらかさばるよね。

だから、容積でどのくらい占めているのかという議論はけっこう説得力があると思う。

2点目は「分別収集リサイクルの促進」。

ここで読まれていた資料は寄本さんのだったねえ。懐かしい。道州制の時によく使わせていただきました。

税収で600億をリサイクルに回せるという話だった。

3点目は「環境意識の向上」

これって、証明できると強いとは思うんだけれど、なかなかね。言っただけになっていたので、このままでは取れないかなという感じでした。

重要性は3点。

1点目が費用の負担が軽減される。国税庁の資料を出して、1500億負担が減るという話を出していた。

2点目は環境に優しい行動のきっかけになる、というもの。発生過程3が証明不足なので、ちょっととれないかなと。

3点目は悪化を押さえる。

CO2とダイオキシンの話が出てましたね。

CO2はわかるけれど、ダイオキシンは証明が難しいかな。ポリエチレンは分解すると水素とCO2になるというし。

対する否定側は「レジ袋製造会社の利益損失」。第一試合でみたデメリットと同じだった。

さて、反駁に入ってからの攻防が面白かった。

否定側第一反駁。まずメリットの発生過程1に関しては、大きく二つの反論を展開した。

レジ袋がゴミ袋として使われているため、小さなゴミ袋に置き換わるので減らない、というもの。

もう一つは現状でゴミの全体量が減っているので、ゴミ減量は内因性を失っているというもの。平成10年とその後のゴミの量が比較されていた。

発生過程2に関しては、600億を地方で分割してしまうので、それほど有効な活用は出来ないというもの。

発生過程3にはあまり環境のことを考えない人は、結局「高いなあ」と思うだけで変化がない、というものだった。

重要性にも発生過程への反駁を踏まえて、重要性を小さくする反論、どのくらい解決できるのかわからないという反論がそれぞれ行われた。

さて、これを受けた肯定側第一反駁。今まで見た中学の肯定側第一反駁でも出色のできだったと思う。

メモに「倒産しない。デメリット消えた」と書いてある。

デメリットに5点反駁をしていた。

まず、レジ袋業者が他のものも作っているという反駁をしたのだが、ここで、レジ袋の原材料であるHDPEに踏み込んで、これだけを扱っている業者は3社しかないと反論してきた。これにはびっくりした。東京に戻ってからリサーチしてみたけれど、うまく検索できなかった。ただ、HDPEしか扱っていない業者で、しかもレジ袋ではなく、おしぼりの袋を作っている業者がいるということはわかった。

さすが、藤田さん。緻密な調査の一端を伺うことが出来た。

次にプラン導入まで2年間あるので、対策をとることが出来るという反論をした。

これは、ぼくだったら、今すごく大変で、外国製品に取って代わられているという資料を否定が読んでいるので、2年後には消滅しているといった反論をしたいなあ、なんて思ったりもする。

さらに、利益というのは100円のものを105円で売ったとしたら、5円の部分だけなので、丸ごとなくなっても、利益の減る分はそんなに大きくないという反論があった。

こういう反論をしてきたのも初めて目にした。

輸入が増えているという否定側の主張に注目して、現状でも起こっている問題だという反論をした。これもうまかったな。

さらに、固有性の議論で、現状で輸入品に負けており、それでも売れているものがあるとすれば、それは価格以外の理由で売れているという反駁をしてきた。

まあ、これだけ厚く反論されると、もともと固有性があやしいデメリットなので、消えたな、とこの時点では判断した。

メリットへの最反論では、発生過程1に対して、ゴミ袋に置き換わるのはそれほど多くないという反駁を資料付きで行い、発生過程2については、資源として回収するといい、3については3点に分けて論理的理由づけによる反駁を行った。

まあ、ここまででは、メリットは削られたけれど、発生過程の1の部分で多少残っている、デメリットは消えた、という風に見ていた。

ところがところが。

第一試合でもうまいなあ、と思ったIくんだったけれど、この試合ではさらに冴えた反駁を展開した。

メリットの議論に関しては、肯定側が反駁し残した現状でゴミが減っているという議論をまず引っ張り、プランをやる意味がない、とアピールした。

発生過程2に関しては、リサイクル資源は色々あるので、何ができるのかわからないし、小さな規模でしかできないと反論。

意識の向上には、本当にそうなるか証明がない、と反駁した。

重要性にもそれぞれ反論し、2と3はほぼ消してしまうことに成功した。

その上で、デメリットの議論については、3社でも損失は出るし、対策と言ってどんな対策がとれるのか、大量生産をしているのだから、損失は大きいというはんばくをし、最後に「目先のレジ袋廃止のデメリットを優先しよう。再就職が厳しい今、失業が起こるようなプランを導入してはいけない」とまとめた。

これで、わからなくなった。

「復活ですか…」とデメリットのフローにメモを書いた。完全に消えたと思ったデメリットが、復活してしまった。しかも、ボーティングイシューを示してきたので、メリットの発生過程1、重要性1の部分で残っている削減による費用の効果を肯定側第一反駁がどう評価するかで、これはデメリットの方へ投票する可能性も出てきた。

で、結果。

肯定側第2反駁も良かったと思う。しかし、1500億の節約を「大きい」とだけしかまとめなかった。たとえば、これが「毎年これだけの税収が入ってくるのだから、この点を評価しよう」とか、もう一言あったら、おそらく肯定側に入れたと思う。

ということで、僕は否定側に投票した。

しかし、簡単に否定側に投票したのではなく、悩みに悩んだ末、最後は否定側第二反駁のスピーチで述べていた言葉がかすかに引っかかっていた、ということで、否定側に入れた。

結果は2−1に割れた。メリット・デメリットの評価に関しては、3人ともほぼ一致していたけれど、最終的にどちらをどう評価するかで悩んだ末の結果だった。ジャッジ任せにされて悩むというより、あのデメリットで、ここまで議論を盛り返してきた否定側第二反駁のおかげでの悩みようだった。

それにしても、すごい試合だった。これだけ拮抗した議論なんて、高校生でもまず見られない。どちらを勝者と呼んでもおかしくない、ベストマッチだった。

講評で徹さんが「比較の方法の引き出しを沢山持とう」と言っていたけれど、まさにその通りだと思う。

あと二週間ちょっと、うちの生徒たちにも「リンゴとミカン」の比較の仕方を考えさせてみようと思う。

それにしても。

去年、この2チームは、全国大会に出場していない。東北地区の層の厚さを感じた。

終了後は、名越さんの案内で、安くおいしく食べて飲めるお店にくりだす。

愉快に飲み、愉快に食べた。名越さんのディベート愛を感じることが出来て、また元気をいただくことが出来た。

さあ、関東甲信越も、うかうかしていられませんぞ。