ディベート×演劇

「子どもらが 自分の場だと 思う所に 花が咲く」(徳村彰)を、学校現場で目指します。

「アトポス」島田荘司

誤解を恐れずに言わせていただくと、これは見事に起承転結の構造にはまった作品だ。
アトポス

以下ネタバレ注意。

ストーリーテラーとしての作者の力量を感じるのは、長い前奏の部分。16世紀に実在したエリザベス・バートリという前代未聞の吸血鬼(?)を巡る、ハラハラドキドキのストーリーは、それだけで一編の作品になっている。

それが場末のバーで人気作家がなじみのバーテンに新作の内容を語っているという落ちが付き、現代のハリウッドを舞台とした連続殺人事件へと展開していく。そしてそこに、レオナ松崎が登場する。読者はもちろん、レオナが連続殺人事件の犯人ではないことは「わかっている」。

しかし、彼女の奇矯な行動が、謎を深めていく。

と思ったら、サロメに、第二次大戦中の上海。

時間が飛び過ぎかな?どう繋がるのかなと思いつつ、再び連続殺人事件が起こり、どんどんとレオナが追いつめられていくのを、ハラハラしながら読み進めていくと、御手洗が白馬に乗って登場ときたもんだ。

ちょっと、島田さん、格好つけさせ過ぎじゃないですか、と思うのだけれど、御手洗のセリフを聞くと、なんだか必然性を感じちゃうんだよね。

そうして、タイムリミットはたったの一日、という中で、快刀乱麻を断つ、というヤツですよ。

ふー。すっきりした。

読み終わると、題名の意味もなるほど、と思う。僕も次男がまだ小さかった頃、彼が布団に顔をこすりつけて、顔中粘液が噴き出している所にステロイドを塗っていたから、あの症状がさらに悪化したときのことは想像がつく。

にしてもだ。本当に見事な解決ぶりだ。

ラリーの死因は容易に想像がついたけれど、あの巨大なモスクが回転するということはちょっと想像がつかなかった。脱帽します。

一点、サロメの中で、ヘロデアとサロメがルーマニアから流れてきたという下りは、レオナが脚本を書いたということだから、レオナの筆が滑ったということかな。

まだローマ帝国は健在の時代だから、ルーマニア(作中ローマ人の国という意味と述べられている)がある訳はないんだけれど。

それから、サロメはやっぱり日夏耿之介氏の翻訳がいいなと再認識しました。