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「新選組読本」日本ペンクラブ編

新選組読本

 修学旅行中に読もうと思って借りた本だったのだが、思ったより内容があって、さらっと読み飛ばすことができなかった。

 


「王城の護衛者」司馬遼太郎
司馬さんの文章は読みやすいし、引き込まれてしまう。松平容保を語るのに、保科正之から語り起こしてくるところが、仕事の緻密な司馬さんらしさかな。政治を行うために必要な策略を弄することを嫌い、あくまでも至誠を持ってことにあたろうとした人間として容保を描いている。保科正之の遺訓に殉じた容保とその家臣団への共感がこの悲しい挿話に救いを与えている。
「八木為三郎老人壬生ばなし」子母沢寛
新選組始末記」からの抜粋。子母沢寛さんが新撰組を知る古老へ聞き書きに毎週末京都へ出かけたのは、新幹線が通っている今とでは考えられない大変さだったろう。肉体的にも精神的にも、夜行列車で行って帰ってのとんぼ返りで、すぐにまた仕事という生活。それを支えた情熱は、たしかに現在の我々に多大な恩恵を与えてくれている。
新選組異聞」池波正太郎
新選組を描こうが、やっぱり池波さんは池波さん。そこここに彼が顔を出してくるのがおかしい。永倉新八を描きかたが僕は一番好きだな。
新選組隊士・斎藤一のこと」中村彰彦
7ページの小品。しかし梗概とも言うべきこの作品の中で、斎藤一の「その後」への空想はどんどんと広がっていく。僕も斎藤一ファンのような気がしてきてしまった。
「新撰組」服部之総
浪士というものを庶民の中の階級としてとらえるという視点がいかにも時代を感じさせる。
試衛館が、江戸にありながら、実質上は武州多摩郡一帯の、身分からいって「農」を代表する、農村支配層の上に築かれていた点である。

 それは手作りもするが「家の子」も小作も持ち、一郷十郷に由緒を知られ、関八州が封建の世となってこの方数知れぬ武家支配者を迎送しながら「封建制度」の根底的地位に坐して微動もせず存続してきた特定社会層である。


プロレタリア科学研究所所員だったこともあるという筆者の切り口が面白い。
「新撰組」平尾道雄
新選組」と「新撰組」とで、どちらが正しいのか。子母沢寛さんと対談した内容が紹介されていて興味深い。新撰組について書くなら、子母沢寛さんと平尾さんの著書は参考文献として外せないなあということを実感。
土方歳三異聞」佐藤あきら(「日」に「立」)
「聞き書き新選組」の著者。土方歳三の子孫。
新選組 伊藤甲子太郎」小野圭次郎
昭和4年になって、靖国神社に合祀されたそうな。あ、そうですか、という感じですけれど。
「竜馬殺し」大岡昇平
大岡昇平さんにこんな作品があるというのがちょっと意外。
沖田総司永井龍男
畢竟、沖田総司に対する資料は少なく、作家の想像力で補うしかない、ということだ。この作品を読むと、沖田総司より、その周辺に描かれているその他の隊士達の方が人間くさくて親近感を覚える。井上源三郎しかり、原田佐之助しかり。沖田総司は、若すぎた。
「八郎、仆れたり」三好徹
清河八郎。策士策に倒れる、というけれど、この人物はまさにそんな感じ。しかし、三好さんは、この人物が酒屋の息子で、他の浪士のように藩という背景を持たなかったことの苦心を描いている。

 たとえば浪士ということで「赤穂浪士」と比較したくなるのだが、赤穂浪士だと時代も離れており、作家も想像をたくましくして、内匠頭は発狂して斬りつけたのだ、なんて解釈も出てきたりする。それに比べると、たかだか100年程前の史実であることから、どうしてもそこまで発想を飛ばすことはできない、という感じはある。

 しかし、群像として描くには非常に魅力があることがよくわかる。「沖田総司」を読んでみてもそうだが、一人の人物に焦点を当てたとしても、その人物と他の隊士がどういう関わりを持ち、どう時代の奔流の中を生きていったのかを描いていけば、必然的に他の人物の形象も細やかにならざるを得ない。そこに、その作家その作家の思い入れが見えてきて楽しい。