「日本は救急車の利用を有料化すべきである。是か非か」資料集

2013年3月から7月にかけて作成した救急車論題に関する資料集を公開します。

以下の点にご注意ください。

試合などで利用する場合は、ここからそのまま使用せずに、必ず原典にあたって確認をしてから利用してください。

_救急需要は増えている

消防庁「消防白書」平成23年版 207ページ

救急自動車による救急出等件数は年々増加し、平成22年中は過去最高の546万3682件に達し、平成16年以降7年連続で500万件を超えている。救急自動車による救急出等件数は、10年前(平成12年)と比較して約31%増加しているが、救急隊数は約8%の増にとどまっており、救急搬送時間も遅延傾向にある。

 

_高齢化で救急需要は増大する

消防庁「消防白書」平成23年版 208ページ

平成22年度に行った将来推計によると、高齢化の進展等により救急需要は今後ますます増大する可能性が高いことが示されており、救急搬送時間の遅延を防ぐための更なる対策を検討する必要がある。

 

 

_救急車の出動件数は増え続けている

有賀徹(ありがとおる)「医療崩壊はこうすれば防げる!」昭和大学病院副院長・救命救急センター長2008年7月22日発行P44

「また救急車の出動件数も、年々増加の一途を辿っている。1994年から2006年までの12年間で実に72%も増えている。

 社会の高齢化による影響が大きいが、なかにはタクシー代わりに救急車を呼ぶなど身勝手な理由で呼ぶケースも増えていて、それが救急業務の繁忙を加速させている。東京に限っても、年間の救急車の出動台数は約70万台にのぼる。つまり、一日2000台出動していることになるが、それでも足りなくて、赤い消防車が現場へ先に駆けつけることが珍しくないのが現状だ。東京では、救急車が大幅に不足しているのである。」

 

_救急難民/救急搬送受け入れ拒否

現代用語の基礎知識2010(2010年1月1日発行 自由国民社)p867

「緊急の治療が必要な患者が、救急病院の受け入れ先が決まらないまま、救急車に乗ってさまようこと。救急搬送についての総務省消防庁の調査では、1年間(2007年)に救急搬送時に10回以上断られたケースが全国で1074件あり、このうち東京都が614件と際立って多い。首都圏と近畿圏の都市部で搬送受け入れを断られるケースが多い。一方、救急医療の現場では、満床や患者治療中のため、新規患者を受け入れできないケースが少なくない。緊急性の低い軽傷の患者が119番で救急搬送を求める事例が増えていることも、救急現場の負担になっているといわれる。」

 

_医療機関が患者の受け入れを拒否する理由

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P40)

「1つは、医師が別の患者を「処置中」で、新しい患者を診る余裕がない場合である。これは基本的に需要と供給のバランスが崩れているために起こる。社会の高齢化とともに救急搬送の件数は増えている一方で、病院そのものは増えていない。搬送されてくる患者の数に対して、病院および医師の数が足りないため、患者に医療を供給できない状況に陥っているのである。」

 

_訴訟を恐れて救急の患者を断ることがある

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P40

「次に「処置困難」のケースだ。病院の設備不足や、専門医の不在などによって患者に十分な治療ができない状態を指す。これについても、供給側の良と質が十分でない側面を指摘できるが、別の要素もある。

 たとえば、肩の痛みを訴えている患者の受け入れを要請されたとする。痛みの原因が骨や筋肉にあれば整形外科の範疇だが、心筋梗塞でも肩に痛みが起こることがある。このため、夜の当直を一人でこなしている病院では、慎重を期して断る場合が少なくない。自信がないのに受け入れて、万が一、問題が起こったら訴訟の可能性もあるからだ。すでに、そのような事例は知られている。これもそれなりに深刻な事態である。」

 

_ベッドに空きがないので受け入れたくてもできない

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P40〜41

「最後に、「ベッドが満床」という病院も多かった。病院のベッドが全部埋まっていて、患者を受け入れたくても受け入れられないのである。」

 

_消防車の出動の7割は救命対応

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P44〜45

東京消防庁の資料によると、2006年の消防車の出動件数11万7049件のうち、71%が救命対応で出動している。一日228件も、救命対応で消防車が出動しているのだ。これだけでも、いかに救急医療がてんてこまいの状態かおわかりいただけるだろう。」

 

_救急病院の医師は疲れきっている

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P46

「重傷の患者が続々搬送されてくる急性期病院の医師のストレスは相当なものだ。東京都病院協会が、急性期病院(主に二次救急)とそれ以外の病院(非急性期病院)に勤務する220人の医師を対象に行った調査では、両者に次のような差が見られる。

 週平均の勤務時間は、急性期病院では、56・8時間にのぼるが、非急性期病院は45・3時間だった。そして、週平均60時間以上勤務している医師の数は、急性期病院の方が4倍近くいて、残業時間も急性期病院の方が約2倍となっている。また、一ヶ月の当直回数が4回以上の医師は、急性期病院では52%を占めたが、非急性期病院はわずか6・5%にとどまった。さらに、勤務がきついと感じている医師は、急性期病院40%に対し、非急性期病院は14・3%にすぎない。意思不足を感じている割合も急性期病院は71・3%と高く、非急性期病院の54・3%と開きがあった。さらに、転職を考えている割合も、急性期病院では28・2%だったのに対し、非急性期病院では8・7%と、前者の方が圧倒的に高かった。」

 

_救急病院はなくなる危機にある

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P47

「救急の現場は、前代未聞の最大瞬間風速にさらされている。いつまでこの激しい風速に耐えられるのか予想もつかない。実際に、耐えられなくなって倒れていくところがどんどん増えている。救急医療の現場には、医療全体の問題が噴出し、吹きだまっているといっていい。

 それでも医療者は120%フル稼働でがんばってきた。しかし、がんばるにも限界がある。ふと気がつくと、あちこちで診療科ないし病院は閉鎖され、現場から医師が立ち去っていたというのが現状だ。

 このような状況で近隣の病院が倒れると、大変な事態となる。千葉県のある病院の救命救急センター長が「うちの病院の周囲は焼け野原だよ。あと一件でも潰れたら、うちも終わりだ」といっていた。ドミノ倒しのように次々とその地域から急性期病院がなくなって、救急搬送されてくる患者が20%も増えたという。」

 

_軽症の患者が減れば、救急の現場の厳しさは軽くなる

(有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長「医療崩壊はこうすれば防げる!」2008年7月22日発行P5)

「急性期病院に搬送される患者の中には、軽症の患者も少なくない。そうした患者の対応に追われることが、緊急度の高い患者の治療を困難にしたり、救急医の疲弊を加速させている。」

 

_軽症者の搬送が多い

杉本(大阪大学名誉教授)『救急医療と市民生活』(へるす出版、1996年)、p. 99

「救急隊員のもつ大きな不満の一つは、軽症の患者の搬送依頼が多いことである。どの地域でも、約半数の患者は入院すら必要としない軽症の人たちであった。虫刺され、擦り傷などの軽微な外傷や便秘、下痢、かぜなど、自分で歩ける程度の軽い病気でも救急車が呼ばれており、救急隊員の不満の種になっている。このように気軽に消防救急隊が呼ばれている原因として、①核家族化によって若い夫婦の家庭では病気の知識が乏しくなり、子どもの病気などではすぐにパニック状態になること、②家庭医をもつ家族が減り、緊急時に適当な医療機関の所在がわからない人たちが増えたこと、③救急自動車を使用するに当たっての公共性に 

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ついての認識が足りないこと、などがあげられている。しかし、この状況は患者のほうからみると必ずしも正当ではない。子どもが急に熱を出しそのうち下がるだろうと思っていたところ、夜中になってもむしろ上がり気味だし、そのうち夜も更けてあたりは森閑としてくる、どこへいってよいかわからないとなれば、若い母親の不安が募ってくるのは目にみえるようである。思いあまって消防本部に電話をかけてくることも容易に想像できるところであろう。救急車が来てくれて夜間診療所などへ運んでもらった結果、これはかぜだから家へ帰って暖かくして寝させてやりなさい、熱冷ましの薬を処方しましょう、それにしても昼間から熱が出ているのにどうして今ごろ救急車に来てもらったの、と医師に怪訝な顔をされ、挙句の果て、救急隊員にまで白い目でみられるということになると、この母親も気の毒である。この母親を無能視したり、公共性に乏しいと責めても問題の解決にはほど遠いであろう。このうちで①のどうしてよいかわからない、②の救急医療機関の所在がわからないという問題に関しては、情報提供さえすれば解決できることになる。地方によっては、テレホンサービスなどで救急病院や休日診療所の情報サービスを行っているところがあり、このような地域では救急車の出動要請が著しく減少したことが報告されている。したがって、一般市民を対象に正確な情報提供を行うことをもっと真剣に考えるべきであろう。もう一つは、救急車の有料化である。有料化してタクシーなどの数倍の料金を徴収するようにすれば、おそらく厚かましい人の救急車利用は減少しよう。その逆に、本当は救急車に来てもらうべきなのに、遠慮して自分の車などで運んでいる人も結構多い。公団住宅などでのアンケート調査によれば、有料化を望む人のほうが多いという結果もある。欧米でも救急車は有料が原則である。ただし任意保険などは、治療費の中に搬送料を含んでいることが多いので、そのまま一 

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般市民が負担するわけではない。けれども、救急隊員の中からは有料化を望む声はまず聞かれない。今の利用者の中には無料でも大威張りで救急車を呼び、隊員に無理難題を吹きかけるものが少なくないから、これが有料化されれば、その連中がどんな無茶をいい出すかわからないという心配をしているようである。」

 

_道路の渋滞は2008年6月施行の改正道路交通法により緩和されている

高田 邦道(たかだくにみち)日本大学理工学部社会交通工学科教授、路上駐車対策プロジェクト研究代表者

道路交通法改正による駐車実態の変化」(シリーズ/自動車交通の話題を追ってその39JAMAGAZINE 2008年11月号http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200811/09.html

「東京の晴海通りほか主要路線(約32.1km)では施行後1ヵ月71.1%、3ヵ月73.9%、6ヵ月57.4%減少している。大阪 都心部(約4km)では、56.5%、73.3%、79.6%それぞれ減少している。その結果、東京では渋滞長が27.2%(施行後3ヵ月平均)、 22.2%(同6ヵ月平均)、大阪では、渋滞時間23.1%、23.8%それぞれ減少している。また、平均旅行時間も東京で9.5%、6.7%、大阪で 11.8%、16.2%、それぞれ短縮されている。」

 

「路上駐車取締強化の結果、大都市で50%以上の削減効果があった。」

 

_現状で貧困者は医療を抑制して死亡している。

しんぶん赤旗2012年2月28日

全日本民主医療機関連合会が実施した調査では、経済的理由から受診手遅れとなり死亡した人は昨年1年で67人にのぼりました。調査は全日本民医連の医療機関で判明した「氷山の一角」であり、全国で5500人に達すると推計される深刻な事態です。「保険証1枚で誰もがどこでも医療を受けることができる」という「国民皆保険」の仕組みが機能不全に陥っている現実を突きつけています。

職を失い「無保険」になったり、国民健康保険料(税)の滞納で窓口10割負担となる資格証明書などに切り替えられたりした結果、命を落とすケースが多発していることがとりわけ重大です。被用者保険に入っていない国民すべてをカバーすることで「皆保険(かいほけん)の最後の砦(とりで)」のはずの市町村国保がその役割を果たさず、お金のない人を医療から排除しているのです。」

 

2011年3月3日(木)「しんぶん赤旗

 「経済的な理由から医療機関への受診が遅れ死亡したとみられる事例が、2010年の1年間で71に上り、05年の調査開始以来最多に―。2日、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が加盟事業所を対象に行った調査の結果を発表しました。 (関連記事)

 高すぎる国民健康保険料(税)の滞納などによって、無保険もしくは短期証・資格証明書を交付された人が42例。内訳は無保険25例、短期証10例、窓口で医療費全額をいったん払わなければならない資格証明書7例です。

 社保、国保など正規の保険証を持ちながら、窓口負担の重さなどのため受診が遅れ死亡したと考えられるのは29例で、昨年調査の約3倍です。

 無職や非正規労働者が多く、重症のぜんそくのため高校中退後、非正規の仕事を繰り返し、無保険のまま救急搬送され入院の10日後に亡くなった32歳の男性もいました。1割の窓口負担が払えないと受診を拒んだ84歳男性など、3人の後期高齢者も含まれます。

 調査対象は、全日本民医連の加盟事業所(144病院、523診療所など総計1767施設)。

 特徴は、05年から死亡事例が増えつづけていることです。その原因について全日本民医連は「高い保険料と重い窓口負担が結果的に死亡事例数を増加させた。民医連がここ数年、無料低額診療事業にとりくむ病院・診療所を増やし、経済的困窮に陥った人々への受け皿を広げてきたことも、報告事例増加の一因として考えられる」とみています。

 厳しい雇用・労働環境のもと、死亡事例のうち50~60代の男性が約7割を占めています。

 疾病別では71例中悪性腫瘍46例、糖尿病8例。がん患者の大半が経済的な困窮のため高い治療費が払えず、末期状態でようやく受診にこぎつけています。

 全日本民医連は、緊急提言として、▽国保の短期保険証、資格証明書の発行をただちに中止し、すべての人に正規の保険証を交付する▽窓口負担を軽減する▽高齢者と子どもの医療費は無料にする、などを求めています。

 長瀬文雄事務局長は、「事例は氷山の一角だと思います。今年は国民皆保険制度がスタートして50年の節目の年です。国や自治体は実態をしっかり調査し、憲法25条にのっとり国の責任で早急に対策をとるべきです」と話しています。」

 

_地方の財政は有料化では改善しない。

総務省ウェブサイト「地方財政の現状」

 地方財政は、約1,800の地方公共団体の財政の総体であり、その多くは財政力の弱い市町村です。地方財政の財源不足は地方税収等の落込みや減税等により平成6年度以降急激に拡大、平成15年度には約17兆円に達しました。平成24年度は、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が緩やかに回復することが見込まれる一方で、社会保障関係費の自然増や公債費が高い水準で推移すること等により、財源不足は約14兆円に達しています。

 また、地方財政の借入金残高は、減税による減収の補てん、景気対策等のための地方債の増発等により、平成24年度末には200兆円、対GDP比も41.8%となり、平成3年度から2.9倍、130兆円の増となっています。

http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei.html

 

_広報活動で利用は減らせる

2009年02月06日 19:57 医療介護CBニュース キャリアブレインhttp://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=20491

「救急出動、1年間で19万件減

 昨年の救急出動件数は510万31件で、前年と比べ約19万件減少したことが、総務省消防庁のまとめ(速報)で明らかになった。搬送人員も約22万件減少した。
 まとめによると、昨年一年間の救急出動件数は510万31件で、前年の529万236件から19万205件(3.6%)減少。
 また、搬送人員は468万606件で、前年の490万2753件から22万2147件(4.5%)減少した。
 都道府県別に救急出動件数を見ると、減少の幅が大きかったのは、北海道、大阪(共に5.6%減)、東京(5.5%減)の順で、大都市部での減少が目立った。
 救急出動件数が減少した消防本部(639本部)にその理由を聞いたところ、全体の68.5%が「一般市民への救急自動車の適正利用などの広報活動」を挙げており、2番目に多かった「頻回利用者への個別指導と毅然たる対応」(19.4%)を大きく引き離した。
 消防庁の担当者は「今年も引き続き、救急自動車の適正利用について市民へ広報していきたい」と話している。」

 

_自分が重傷だと思う人は3万円までは利用に影響が出ない

「救急医療サービスの経済分析 2007年3月16日http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2006/13100/documents/13100-2.pdf

「本人が重症の場合,3 万円までは利用の影響は受けず,本人が軽症では料金 1 万円のときまで需要は抑制されず,2 万円から利用が抑制される ことが示されている.」

 

_有料化が1万円以下だと利用は逆に増える

「救急医療サービスの経済分析 2007年3月16日http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2006/13100/documents/13100-2.pdf

「1万円までの価格ではオッズ比が1を超え、無料のケースよりも救急車利用を選択する確率が高くなっている。これは1万円以下の金額では救急車利用に対してためらいを感じる人たちからためらいを取り去る効果が、料金負担による利用抑制効果を上回るため、救急要請が増加する可能性があると考えられている。」

 

_悪質な利用者は料金を払わずに利用を続ける

「救急医療サービスの経済分析 2007年3月16日http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2006/13100/documents/13100-2.pdf

「料金が支払えないという理由で,重態の可能性のある患者を放置するわけにはいかないため,救急搬送要請があれば,料金の徴収の有無に関わらず搬送せざるを得ない.本当に悪意のあ る利用者であれば,利用しても料金の支払を拒むことを前提に悪意のある利用を続ける可能性が ある.」

 

_自分は重傷だと思っている人は利用するので減少しない

「救急医療サービスの経済分析 2007年3月16日http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2006/13100/documents/13100-2.pdf

「患者としては軽症の患者に 分類されるが自らを重症の患者と思い込んでいるような善意の軽症者の利用は減少しない だろう.その点では,救急車利用の有料化だけでは,自治体の救急需要の抑制・制限は実 現しない可能性が高い」

 

_一般市民による心肺蘇生が普及している

2010年11月29日 12:35 医療介護CBニュース キャリアブレイン

一般市民による心肺蘇生、5年で1.5倍に消防庁

「心肺停止による救急搬送のうち、そばにいた一般市民によって心肺蘇生の応急手当てが行われたケースは2009年、全国で計1万834件となり、5年間で 約1.5倍に増えたことが、総務省消防庁のまとめで分かった。市民のAED自動体外式除細動器)使用実績も年々増加。救急搬送に要する時間が延びている 中、消防庁は「市民の応急手当ては、救命率、社会復帰率の向上に重要だ。今後も一層の推進を図る」としている。



 消防庁によると、昨年1年間に心原性の心肺機能停止のため救急搬送された事例で、心肺停止の状況を周囲にいた市民が目撃していたケースは2万1112件。このうち、51.3%に当たる1万834件では、救急隊が到着するまでの間、市民が応急手当てを行っていた。


 応急手当てが行われた場合の「1か月後生存率」は13.8%で、行われなかった場合(9.0%)に比べて約1.5倍に上昇。「1か月後社会復帰率」も9.1%で、行われなかった場合(4.9%)より約1.9倍高かった。



 また、応急手当てにAEDを使用したケースは583件あり、「1か月後生存率」「1か月後社会復帰率」はそれぞれ44.3%、35.8%と、いずれも高い効果を示した。

 市民による応急手当ての件数は、統計を取り始めた05年(7335件)以降、着実に増えている。手当てが行われた件数が、行われなかった件数を上回ったのは初めて。

 

_有料化が安易な利用を招く

『バス・タクシー専門情報誌Tramondo ONLINE』2004年3月8日http://www.tramondo.net/old/top/040308.htm

消防庁は、今回の調査結果について「非常に参考になった」と評価しながらも「有料化の実現にはまだ課題が多い」としている。有料化した場合、金さえ払えば良いと考えて安易に利用するケースが出てくる可能性があることを指摘。 」

 

_救急車は今後増えていく

毎日新聞』2004年1月17日http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/900313/8b7e8b7d8ed4-0-14.html

「大規模災害に対応するため、全国の自治体の消防組織でつくる「緊急消防援助隊」について、総務省消防庁は、08年度までの5年間で登録部隊を約4割増強し約3000隊にする方針を決めた。(中略)整備計画では、(中略)高度な救命資機材を備えた救急部隊を2割増の600隊。給水設備やトイレを備えた後方支援部隊を4.7倍増の400隊・・程度にする方向。消防ポンプ車や救急車を約900台増やすほか、防災ヘリも15機を5年間で新しいものに取り替える方向だ。 」

_軽症者の利用が多い

田淵昭彦(たぶちあきひこ)(安城更生病院救急部)「医療提供側の態勢立て直しと利用者の意識改革が必要」『患者のための医療』2002年4月号、pp. 97-98

「救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、ついで交通事故、一般損傷の順となっている。しかし、この内訳を見ると入院加療を必要としない軽症傷病者の割合が51%も占めている(表2)。患者自ら病院に来院するケースも含めると、救急外来に訪れる患者の実に8割近くが軽症患者であるという報告が多数見られる。」 

 

_不適切な利用がある

「救急車出動、過去最高1万2105件 高齢者が4割占める 大分市消防局=大分」『読売新聞』2004.02.08、西部朝刊

「搬送された十八・六十四歳の五千四百十九人のうち、半数の二千五百三十七人が軽症。軽い腹痛などで119番通報したり、一日に六、七回も救急車を呼んだりした悪質なケースもあった。救急車で搬送されると待たずに診療を受けられることを知っていたり、タクシー代わりに利用したりしているとみている。同消防局は「重症患者への対応が遅れてしまう。自分で病院に行くことができる場合は、家族の車かタクシーを利用してほしい」と協力を呼びかけている。」 

 

_救急医療は危険な状況にある

神戸新聞』2004年3月4日http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou04/0304ke17680.html

「神戸市内の昨年の救急出動は、過去最高の約六万四千件。一日平均にすると百七十五回になる。震災のあった一九九五年の約五万三千件を超え、十年前の約一・五倍に増えている。一方、同市内の救急体制はほぼ横ばいで、二十八隊・車両二十八台。この規模では、一日平均二百三十件ペースになると、現場到着が遅れる恐れがあるという。かぜがはやりやすく、大半の医療機関が診察をしていない年末年始は一一九番通報が集中し、昨年一月三日には一日二百九十件に達するなど、日によっては「危険水域」に突入している。」

 

_受信者の意識が問題

石井敏弘(国立講習衛生院公衆衛生行政学部主任研究官)『<教育報告>軽症者による救急車利用を促す要因に関する研究』http://shoroku.niph.go.jp/kosyu/2000/200049040009.pdf

「救急搬送された受診者について,医学的見地からは救急車利用の必要性がない症例が少なくないことが医療提供側から指摘されている.救急医療施設側からは便利感覚で救急車が利用されているとの指摘があり,一方,軽症受診者を対象とする救急車利用の調査でも「早く診てくれると思った」という患者の利益・便利を目的とする回答が多い.こうした現状の背景として,傷病程度に関係なく「いつでも」「どこでもモ」適切なモ医療を受ける権利があると患者側が考えているとの救急医療現場からの報告がある.」 

 

_救急車の無料利用はモラル・ハザードを招いている

林宣嗣(はやしよしつぐ)(関西学院大経済学部教授)『地方分権の経済学』(日本評論社、1995年)、pp. 93-94

「排除原則の適用が可能であり、しかもサービスの消費に競合が生じるという民間材としての特徴を備えた行政サービスにおいては、受益者(利用者)に直接的な負担を求めることが、資源の有効利用という点からみて望ましい。サービスを無料ないしは極端に低廉な料金で提供すると、利用者のコスト意識は薄れ、消費は過剰となって資源の浪費を招くことになる。「モラル・ハザード」と呼ばれる現象である。」 

 

_軽症者の利用が救急医療の妨げになる

富岡譲二「市民を巻き込んで救急のあり方問い直すべき」『患者のための医療』2002年4月号、p. 85

「近年119番による救急要請も、救急車によって搬送される患者数も右肩上がりに増加している。もちろん、各自治体は、このような出場件数・搬送人員の増加に対応できるように、人的・物的資源の拡充を図ってはいるものの、その予算には限りがあり、特に大都市部においては、一つの救急隊の出場件数が限界に近くなってきているところも少なくない。このような事態が続けば、119番通報から救急隊到着までにかかる時間が極端に延びたり、救急隊による初期治療が十分におこなわれないなどの弊害が出てくることは容易に予想される。

総務省消防庁の統計によれば、平成11年中の救急出場件数及び救急搬送人員は、それぞれ393万999件、376万1,119人であり、全国で一日平均約10,767件、8.0秒に1回の割合で救急車が出場し、国民の約33人に1人が救急搬送されたことになる。しかも出場件数、搬送人員ともに、年間数%ずつ増加しているのが現状である。ところがこの間、日本国民の衛生状態が悪化したわけでもないし、交通事故による死者はむしろ減少してきていることを考えあわせると、より軽症な患者が救急車を要請するようになってきている傾向がうかがわれる。もちろん、このこと自体が悪いわけではないが、実際に救急外来で勤務していると、はたして本当に救急搬送が必要なのか首を傾げる例も増えてきているのを実感する。」 

 

_アメリカの救急医療

南善巳(みなみよしみ)危険物保安技術協会監事「『1マイル4.9ドル頂きます。』・完全有料の米国救急車・」『Safety & Tomorrow』2004年1月

「我が国は国民皆保険ですから、救急車が患者をどこの病院に搬送しても病院側は原則的にはこれを受け入れて治療しても医療費上は問題がありません。しかし、次のような制度であるとしたら、救急車は自己の判断でどこの病院にでも患者を安心して搬送できるでしょうか。国民皆保険ではなく、健康保険に加入していない人が制度的に存在すること(医療費未払いの可能性があります。)、患者の健康保険を引き受けている保険会社が搬送する病院を指定できること(この場合、救急車の判断のみで搬送すれば、医療保険拒否が生ずる可能性がありますし、訴訟の可能性もあります。保険会社は、医療費が高い病院への患者の搬送を拒否しますので、患者は交通事故のような緊急の場合はともかく、搬送される前に保険会社からの了解を貰わなければなりません。これを管理医療(Managed Care)といい、保険財政悪化防止、医療費増加対策として近年特に取り入れられております。その導入により、救急電話や救急部門の利用が減少しているという報告まであります。)のような場合です。これが、米国です。医療保険制度は、救急制度に強い影響を与えるのです。」 

 

_有料化では利用の抑制にならない

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出11ページ

「しかし,このような有料化が利用者の制限につながっていないという研究もある. Richardson (1997)によれば,ニューヨークでは,救急車利用は有料でかなり高額である にもかかわらず,代替する交通手段を持たない救急車利用者の 86.5%が医学的にみて不要 であっても救急車を利用していることも報告されている3.つまり救急車が有料化であって も,本来救急車を利用する必要のない患者の利用を抑制していないのが現状である.」

 

・下開千春(第一生命経済研究所研究員)「増える救急搬送とその対応」『第一生命経済研究所HP 2003年ミニレポート』http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/

「このような有料化は、果たして利用者の制限につながっているのだろうか。Richardson らの調べによれば、ニューヨークでは、救急車利用は有料でかなり高額であるにもかかわらず、代替する交通手段を持たない救急車利用者の86.5%が医学的にみて不要であっても救急車を利用していることも報告されている。」 

 

_アメリカでは救急車利用が多い。

廣川 幹浩(ひろかわみきひろ)(消防庁派遣)元ニューヨーク事務所所長補佐「ニューヨーク市における救急医療サービスの概要について」(自治体国際化フォーラム2007.7月号http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/articles/gyosei/213/index.html

「FDNYによると、救急車を呼ぶ人の中には、救急車で来ると病院で症状が重いと判断されると思い、救急外来でできるだけ早く見てもらおうと、救急車を要請する人が多いようです。また、アメリカでは明確な主要因は分かりませんが、前記の要因も含め、救急要請が日本と比較して圧倒的に多いです。例えば、ニューヨーク市消防本部管内では、一年間に総人口の7人に1人が救急車を要請しています。これは、29人に1人の日本と比較すると約4倍の要請割合です。また、日本の消防本部の中で最も多い、東京消防庁管内の20人に1人と比較しても約3倍になります。」

 

_ニューヨークでは料金は保険会社に請求される

廣川 幹浩(ひろかわみきひろ)(消防庁派遣)元ニューヨーク事務所所長補佐「ニューヨーク市における救急医療サービスの概要について」(自治体国際化フォーラム2007.7月号http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/articles/gyosei/213/index.html

「FDNY(ニューヨーク市消防局)の救急車の利用者負担は通常一回5~6万円程度であり、病院の救急車の利用者負担はそれよりも割高です。料金の回収は、通常は搬送機関が搬送された人の加入している民間の保険会社に請求しています。しかし、民間保険に加入していない人も多く、利用料金を回収率は低いようです。」

_カーラーの救命曲線

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出9ページ

「1心臓停止後約 3 分で 50%死亡

2呼吸停止後約 10 分で 50%死亡

3多量出血後約 30 分で 50%死亡

図 1.6      カーラーの救命曲線**

カーラーの救命曲線

上のグラフは,フランスの救急専門医M.Cara が 1981 年に報告したもので,現在,日本で行われている応急手当講習会の理論的根拠となっている. 臨床的な心停止に陥った場合,脳は約 3〜4分間の血流停止によって重大な障害を受けるので,心停止に対する蘇生法は速やかに開始しなければ効果が乏しいとされている.」

 

_有料化の問題点

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出12ページ

「第一に,有料化の問題は,高齢者及び低所得者層の利用制限が拡大する危険性が予測さ れることである.有料化は患者・国民の受療権を侵害する可能性があり,また,有料化に よって患者の受診抑制が強まり,症状が悪くなってから医療機関にかかることによって重 度化し,結果的に国民医療費の増大につながるという側面があるという指摘もある*2.

東京消防庁では,救急車の有料化の検討も含めた救急需要対策検討委員会を発足させ, 検討を行った.その結果,救急業務の有料化に対し,次のような点が懸念事項としてあげられた4.

1事故や災害から国民の生命や身体を保護することや,緊急を要する事態での人命の救 護・救急活動は,関係法令が規定しているように,地方公共団体の基本的な責務であること

2有料化を図ることは,「お金を払うのだから」といった意識によって,これまで以上の 救急需要増大を招く恐れがあること

3有料化を図る前提として,保険等の社会インフラの整備が求められること

4本来救急車が必要な事案についての要請を躊躇させる恐れがあること などである.

これらの法的・社会的背景などから,現状では救急業務の有料化は難しい実態にあると した否定的な意見もあり,今後の救急需要の動向などをみながら将来的な課題として慎重 な検討が望まれる.」

 

_トリアージは横浜では成功している

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出14ページ

「一方で,横浜市救急業務委員会 第 11 次報告6は,緊急度・重症度の高い救急通報を選別 する精度を上げるため,識別票を改良し検証を継続したところ,危険なアンダートリアー ジがゼロとなるなど,ほぼ実用化のレベルに達していると報告している.」

 

_横浜型コールトリアージの実際

「横浜型新救急システム」の運用状況について(記者発表資料 平成 21年 11月 13日安全管理局 )

「3 「横浜型新救急システム」の導入効果(別紙参照) (1) 心肺停止傷病者(CPA)の識別結果について

コールトリアージにより自動的に CPA を識別するシステムは全国で初めてですが、 4,665 件の CPA 事案のうち、緊急度等が高い「レベル1」として、出場を指令したもの は、4,183 件で全体の 89.7%であり、適切に識別することができたと考えております。

なお、この CPA 事案に対して、緊急度等が低い「レベル3」としたものはありません。

(2) 緊急度等が高い事案に対する現場到着時間の短縮 コールトリアージの結果を踏まえ緊急度等が高い「レベル1」とした事案では、救急隊

等多数の部隊が出場することにより、最先着部隊の平均現場到着時間は、5 分 12 秒とな り、全救急出場における平均時間(5 分 59 秒)よりも 47秒早くなっています。

(3) 救命活動隊による救急空白地域のカバー 救急隊が出場中の地域(救急空白地域)で救急要請があった場合には、待機している救命活動隊がこれをカバーすることとしています。こうしたケースが、1 年間で 1,823 件 あり、連携出場した救急隊よりも平均時間で2分 56 秒早く現場到着し、傷病者への迅速 な観察や救命処置等を行いました。」

 

 

_トリアージによって救急車の出動は4分の1に減らせる

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長2008年7月22日発行「医療崩壊はこうすれば防げる!」P51〜52

「東京都では、「トリアージ」というシステムの導入を試験的に開始した。

 トリアージはもともと、災害などで傷病者が多数出たとき、効率よく対処するため、患者を重症度に応じて判別するしくみである。それを一般の救急医療の現場でも、積極的に活用しようというわけである。東京では現在、現場に駆けつけた救急隊がトリアージを試行している。現在はまだ月に数十件程度で、救急車の出動台数から計算すると万に一つとくらいしか実施されていないが、成果は上々である。

 現場でこうしたトリアージをはじめた結果、半分くらいの患者は救急搬送しないことの同意が得られた。患者側からのクレームもほとんどない。緊急度が低い患者に救急搬送の必要がないことを告げると、「わかりました。もう少し様子を見て自分たちで病院へ行きます」と素直に応じてくれる場合が少なくない。

さらに、東京では2007年の6月から、電話による救急度・重症度に関する相談業務がはじまった。(中略)電話を受けるのは看護師で、相談室には24時間365日体制で2人の看護師と、1人の医師が常駐している。(中略)

 1日に80件くらいの相談が寄せられているが、そのうち「赤」と判定されるのは20件程度である。単純計算すると、救急車の出動が4分の1ですむことになる。」

 

有賀徹(ありがとおる)昭和大学病院副院長・救命救急センター長2008年7月22日発行「医療崩壊はこうすれば防げる!」

「救急隊による現場のトリアージと、看護師による電話のトリアージが全国で整備されれば、救急搬送される患者の数は大幅に減るに違いない。その分、本当に救急車が必要な場合に遅滞なく出勤できるということである。」

 

_トリアージは危険

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出13ページ

東京消防庁の調査では,病院に運ばれ,医師が重傷と診断した患者の 35%は,救急隊員が症状を中等症や軽傷などと過小評価しているとの結果がでている.また,武蔵野赤十字 病院が救急隊に行ったアンケートでは,救急隊員の 7 割が,傷病者が心筋梗塞かどうかの 判断ができないとの回答がある.救急隊や本人が軽度と判断しても,実際に医師が診断すると重症であることが判明することは医療現場では決して少なくないのである.」

 

_トリアージは救急医療になじまない

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出13ページ

「本来トリアージは,多数の傷病者が一度に発生する大規模な災害や事故など特殊な状況下において有効な手法であるが,119 番受信時および救急隊員が現場で行うトリアージによる病状把握と搬送は,誤った判断や容態急変への不充分な対応・病院等への搬送の遅延を招くおそれがあり,患者のいのちを脅かす危険性がある.したがって,平時の救急要請において,「効率」「搬送抑制」を目的としたトリアージは,救命救急医療にはなじまないと の指摘もある5.」

 

_トリアージは危険

2006年7月14日全日本民主医療機関連合会会長 肥田 泰「「救急需要対策に関する検討会報告書」、「救急搬送業務における民間活用報告書」の発表を受け、改めて安全・安心の救急医療拡充を求める」

総務省は、救急需要増大の中で「救命率の向上」を図るために、119番受信時や現場到着時に搬送対象者の緊急度・重症度の選別(トリアージ)の導入を検討しているが、東京消防庁の調査では、病院に運ばれ、医師が重傷と診断した患者の35%は、救急隊員が症状を中等症や軽傷などと過小評価しているとの結果がでている。また、武蔵野赤十字病院が救急隊に行ったアンケートでは、救急隊員の7割が、傷病者が心筋梗塞かどうかの判断ができないとの回答がある。救急隊や本人が軽度と判断しても、実際に医師が診断すると重症であることが判明することは医療現場では決して少なくない。

 本来「トリアージ」は、多数の傷病者が一度に発生する大規模な災害や事故など特殊な状況下において有効な手法であるが、119番受信時および救急隊員が現場で行うトリアージによる病状把握と搬送は、誤った判断や容態急変への不充分な対応・病院等への搬送の遅延を招くおそれがあり、患者のいのちを脅かす危険性がある。」

 

_トリアージには常にリスクが存在する

2009年笠木実央子(かさぎみおこ)「本邦における救急医療システムの多様性とその問題点に関する考察」

「本邦の救急医療体制の柱である初期・二次・三次救急医療体制は,患者自身あるいは救急隊による病院選定の適切性を前提として計画されてきたが,多数の軽症患者の中に紛れる重症患者を見極めることは難しく,プレホスピタルにおける重症度評価にはやはり常にアンダートリアージのリスクが存在する。」

 

_心疾患ではトリアージは無理。

2003年慶應義塾大学医学部救急部中村岩男他「救急部を受診した急性心筋梗塞患者の治療成績」

「救急隊がプレホスピタルでAMIの1-2割を占める非典型例を診断するのは困難であり,これらの例は救急医療体制から漏れてしまう可能性がある。この点が外傷の救急医療体制と最も異なる点であり,プレホスピタルでのトリアージは循環器疾患では困難である。」

 

_2万円には抑制効果がある

「公共政策の経済評価」事例プロジェクト「救急医療サービスの経済分析」2007年3月16日提出22ページ

「この多重ロジスティック分析の結果,本人が重症の場合,3 万円までは利用の影響は受けず,本人が軽症では料金 1 万円のときまで需要は抑制されず,2 万円から利用が抑制されることが示されている.」

 

_たらい回しの件数はごくわずか

「平成22年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果」平成23年7月22日 消防庁

「平成 22 年中の救急自動車等による総搬送人員 4,985,632 人のうち、重症以上 傷病者搬送事案、産科・周産期傷病者搬送事案、小児傷病者搬送事案、救命救急 センター搬送事案の 4 区分に該当する事案について調査を行いました。

照会回数が4回以上のものは16,381件(全体の3,8%)、6回以上のものは5,468件(同1,3%)、11回以上のものは727件(同0,2%)ありました。」

 

_救急車の搬送件数は増加している

島津岳士(しまづたけし)大阪大学大学院医学系研究科救急医学教授「救急医療の現状と課題」『生産と技術』第63巻第2号(2011)116ページ

「救急車による受診の割合は 15.9%から 41.8%へ大きく増加しているが、重症者の割合に変化は見られないことから、救急車利用のハードルが低くなっていることがうかがわれる。

上記のように救急搬送件数は着実に増加しており、 それに伴って 119 番通報から現場到着までの時間は、 平成 10 年の 6.0 分から平成 21 年には 7.9 分に、病 院収容までの時間は同期間に 26.7 分から 36.1 分に 延長している。また、救急搬送の際に受入れ病院が見つかるまでに救急隊が照会する回数も増加しており、平成 20 年度の重症以上の傷病者の照会回数が4 回以上であった事案は全国で14732 件あり、現場に30分以上滞在した事案は16980件にのぼっている。

全国統計では約 95%の事案で 3 回以内に受入病院が見つかっているが、東京や大阪では3回以内に見つかるのは 90%以下となっており、医療機関の多寡とは関係しない。」

 

_救急車が出払うことがたびたび起こっている

2006.05.22読売新聞 山武地域救急車不足 輪番制「空白日」管内不在事態も 適正利用呼びかけ=千葉 ◆「風邪や歯痛、タクシー代わりはやめて! 

 山武地域に救急車不足の問題が持ち上がっている。県立東金病院や国保成東病院などの病床縮小で、東金市山武市などで作る山武郡市広域行政組合消防本部では管外への搬送が増加。管内の救急車がすべて出払ってしまうという事態も起きている。同本部では予備の救急車を活用し、住民にも適切な利用を呼び掛けている。

 同本部の管内には、7か所の消防署や分署に1台ずつの救急車があり、年間約7000件の救急搬送に対応している。しかし、昨年、東金病院が内科医の減少に伴って患者の受け入れを減らし、成東病院も今年3月から内科の新たな入院患者の受け入れをやめた。

  このため、山武地域の内科の2次救急輪番制は、月の半分が当番病院のない「空白日」となっている。空白日に内科の患者が出ると受け入れ病院を探すのは難しく、救急隊員が10か所以上の病院に電話をすることもしばしば。搬送先も管外の千葉市成田市旭市などで、往復に数時間かかる場合も少なくない。

 そして、4月下旬、すべての救急車が管外に出払うという事態も発生した。この日は、午後7時から急病の患者が7件続き、すべて管外の病院に搬送。7台目の救急車が午後8時半に出動してから、最初の車が午後9時20分に戻るまでの約50分間、管内には1台も救急車がなかった。幸い、この間に出動要請はなく、実質的な影響はなかった。

 こうした事態を受け、広域行政組合は5月から、廃車にする予定だった予備車を再整備して使えるようにし、緊急時には非番の職員を呼び出す体制を取った。

 一方、同本部の救急搬送のうち約半数は軽症者で、風邪や歯痛、寝違えなどで利用したり、タクシー代わりに使う例も少なくないという。同本部では、構成自治体の6月の広報紙・誌に、救急車の正しい利用を呼び掛ける記事を出すことにしている。

 植松憲一・広域行政組合事務局長は「軽症の人が救急車を使うと、本当に必要な人が利用できないということになりかねない。新しい救急車導入に向けて努力はするが、住民のみなさんにも適正利用に協力をお願いしたい」と話している。」

 

_救急車出払うこともたびたび

2008.03.19読売新聞 [時の眼]軽症なのに救急車 搬送患者の5割超える 夜間病院探せず…=茨城

「◆夜間病院探せず119番 90回以上利用の人も 

 県内で救急搬送された患者のうち、緊急性のない軽症患者の割合が増えている。2006年は52%に達するなど、重症患者の搬送に影響する可能性もあり、各消防本部が救急車の適正利用を呼びかけている。タクシー代わりに使うなどモラルの問題や、自分で受診病院を探せないなどの理由で、救急車を安易に利用する患者が絶えない実態が浮かび上がってきた。(福元洋平

 「90回以上救急車を呼んだ人もいた」。ひたちなか市消防本部の沼尻良輝消防司令はため息をつく。市内のある男性は、持病の通院に救急車を利用。回数は90回以上に及び、消防署長が利用を控えるよう行政指導したが利用は続いた。

 ほかにも「子どもが泣きやまない」と通報を受け急行したが空腹だっただけ、という例や「2日間便が出ない」と119番通報した女性もいた。微熱で救急車を呼ぶケースも多い。「一般の通院や、家庭の応急措置で対応できるのに救急車を呼ぶ例は枚挙にいとまがない。『モンスター・ペイシェント(怪物患者)』でしょうか」と話す。

 県消防防災課によると、2006年救急搬送された10万77人のうち軽症者は5万2218人と52・2%を占め、ここ10年で軽症者割合は4ポイント以上増加している。救急隊員は多忙を極め同消防本部は3署で計6台救急車があるが、出払うことも度々ある。

 同消防本部の古川正一次長は「モラルに加え、夜間に受診できる医療機関を探すのが難しいという背景もあるのでは」と分析する。患者が自分で探す場合、かかりつけ医がなければ行政情報や電話帳、インターネットなどに頼ることになる。核家族化や、高齢者の一人暮らしなども増加し、身近に頼れる人がいないという不安感もある。

 県はホームページの「救急医療情報システム」や、24時間電話対応する「救急医療情報コントロールセンター」で医療機関案内を行っているが、医療機関には次々と急患が駆け込み、1分単位で状況が変わる。案内された機関に電話すると、急患が入り受診を断られるという例もある。このため、「救急車なら優先的に診てもらえるだろう」と、119番頼みになっているケースも少なくなさそうだ。」

 

_救急車が緊急でない連絡のために出払ってしまった

広報やまと 2010(平成22)年8月15日号

「通信回線や緊急車両の数には限りがあります。緊急でない連絡に対応していたために、「救急車が本当に必要な人の電話がつながらなかった」「救急車が出払っていてすぐに駆けつけることができなかった」ということ が実際に発生しています。

救急車を呼ぶ際は、本当に必要かどうか、もう一度考えてください。皆さんのご協力をお願いします。」

 

_国民保険料が支払えず、医療にかかれない人がいる

朝日新聞2008年5月18日

「だれもが必要な医療を安く受けられる皆保険制度が、揺らいでいる。約2550万世帯が加入する最大の公的医療保険国民健康保険がほころんできているからだ。(中略)国保料を滞納すると正規の保険証は取り上げられる。(中略)滞納が1年以上続くと資格証明書を渡され、通常は3割負担で済む病院窓口での医療費をいったんすべて払わなければならなくなる。(中略)その結果、短期症を更新できず無保険となったり、資格症を渡されても窓口で払うお金がなかったりして、病院から遠ざかる人が増えている。(中略)こうした事情から病状が悪化し、死亡にまでつながったと思われる患者が昨年、少なくとも31人いた。」

 

_国民保険料が支払えず、医療にかかれない人がいる

2012年2月28日(火)「しんぶん赤旗

 「全日本民主医療機関連合会が実施した調査では、経済的理由から受診手遅れとなり死亡した人は昨年1年で67人にのぼりました。調査は全日本民医連の医療機関で判明した「氷山の一角」であり、全国で5500人に達すると推計される深刻な事態です。「保険証1枚で誰もがどこでも医療を受けることができる」という「国民皆保険」の仕組みが機能不全に陥っている現実を突きつけています。

 職を失い「無保険」になったり、国民健康保険料(税)の滞納で窓口10割負担となる資格証明書などに切り替えられたりした結果、命を落とすケースが多発していることがとりわけ重大です。被用者保険に入っていない国民すべてをカバーすることで「皆保険の最後の砦(とりで)」のはずの市町村国保がその役割を果たさず、お金のない人を医療から排除しているのです。」

_無料定額医療制度

2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗

「生計困難者が経済的な理由で必要な医療を受ける機会を制限されることのないよう無料または低額な料金で病院にかかれる制度。社会福祉法第2条第3項の9に「生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う」とあり、これが第2種福祉事業で、無料・定額診療事業にあたります。生活に困り、医療費の支払いができない人や、保険証を持っていない人、外国籍の人も対象になります。都道府県などの認可を受けた医療機関が実施できます。」

 

_不適切な救急車利用

2008年2月12日 東京新聞:救急車の利用実態(No.193)  不適切な利用救急率に影響:生活図鑑(TOKYO Web)

「最近、救急患者の「たらい回し」が問題になっていますが、その一方では、救急車の不適切な利用が目立ちます。救急車の需要と供給の大きなギャップ が生じる原因でもあり、タクシー代わりにするなど不適切な救急車の利用は救命率の低下を招きかねません。救急車利用の実態を調べてみました。

 一一九番通報で出動する救急車は、緊急の傷病者を病院等へ迅速かつ安全に搬送するための車両です。

  • 出動件数10年で55%増

 総務省消防庁の調べによると、二〇〇六年中の救急車出動件数は五百二十三万一千百六十三件で前年に比べ、一九六三年の救急業務法制化以降、初めて 減少しましたが、過去十年間で見ると約55%も増加しています。一方、全国の消防本部では厳しい財政事情等で、救急需要の増加に救急隊の増強が追い付かな い状態です。〇七年四月の救急隊数は四千九百四十隊で、過去十年間で約10%増にとどまっています。

 需給のギャップ、道路事情などで、現場到着所要時間は遅延傾向にあります。一刻を争う傷病者の救命率に影響が出かねません。さらに、救える命を確実に救うためにも救急車を適切に利用することが、とても大切です。

 〇六年中の救急搬送人員を傷病程度別割合で見ると、約52%が搬送先の医師の診察の結果、入院の必要がない「軽症」でした。この軽症の中に不適切な利用者が相当含まれるといわれています。

  • 「タクシー代わり」まで

 東京消防庁の調査によると、救急車を呼んだ理由として「自力で歩ける状態でなかった」「生命の危険があると思った」が上位を占めています。その一方「夜間・休日で診察時間外だった」「救急車で病院に行った方が優先的に診てくれると思った」というものや、「交通手段がなかった」とタクシー代わりのよ うな回答もありました。

 また、一部には非常識な利用者もいます。年に数十回も利用する「常連」や「今日、入院する予定だ」などといって救急車を呼ぶ人も珍しくないそうです。うそをついて不正に救急車を利用することは違法です。

 症状は軽いが、交通手段がない場合は、民間の患者等搬送事業者などを利用し、どこの病院に行けばいいか分からないときには、自治体などの病院情報提供サービスを活用する方法があります。

 真に緊急を要する人のために、救急車の適切な利用を心掛けることが大切です。」

 

_地方財政の現状

総務省トップ > 政策 > 地方行財政 > 地方財政制度 http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei.html

 「地方財政は、約1,800の地方公共団体の財政の総体であり、その多くは財政力の弱い市町村です。地方財政の財源不足は地方税収等の落込みや減税等により平成6年度以降急激に拡大、平成15年度には約17兆円に達しました。平成24年度は、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が緩やかに回復することが見込まれる一方で、社会保障関係費の自然増や公債費が高い水準で推移すること等により、財源不足は約14兆円に達しています。

 また、地方財政の借入金残高は、減税による減収の補てん、景気対策等のための地方債の増発等により、平成24年度末には200兆円、対GDP比も41.8%となり、平成3年度から2.9倍、130兆円の増となっています。」

 

_高齢者のみの世帯は1000万以上。

2011/7/13 15:44JCASTニュース「貧困率、最悪の16%に 高齢者世帯は1000万を突破」

厚生労働省が2011年7月12日に発表した「2011年国民生活基礎調査(概況)」によると、低所得で生活に苦しむ人の割合を表す「相対貧困率」が09年時点で16.0%となり、前回06調査よりも0.3ポイント増加していたことが明らかになった。データがある1985年以降、最悪の水準。

   また、65歳以上の高齢者のみで構成される世帯数は10年6月時点で1018万8000万世帯。調査開始後初めて1000万世帯を突破した。」

 

_救命率上昇には現場に居合わせた人が重要

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁

「また、平成 16 年に非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用 が認められたところであるが、現場に居合わせた人(バイスタンダ-)が応急 手当を行うことが重要であることから、消防庁においては、国際的な応急手当 のガイドラインに基づいて、より効果的な応急手当の方法を取り入れつつ、住 民に対する応急手当の普及啓発活動を推進している。消防機関による応急手当 講習の受講者は、平成21年中に150万人を超えるなど、消防機関は住民に対する応急手当普及啓発の代表的機関となっている。

今後、増大する救急搬送需要に対応するため、消防庁としても、更なる救急 業務の高度化を総合的・計画的に推進していくこととしており、そのための基 礎資料である救急搬送関連のデータ、救急蘇生統計(ウツタインデータ)につ いて更なる充実を図っていくことにしている。」

 

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁59ページ

「平成 21 年の心原性でかつ心肺機能停止の時点が目撃された症例のうち、一般市民による心肺蘇生が行われたものの 1 ヵ月後生存率は 13.8%、1 ヵ月後社会復 帰率は 9.1%であった。心肺蘇生が行われなかったものと比べ、1 ヵ月後生存率 は 1.5 倍、1 ヵ月後社会復帰率は 1.9 倍の救命率の上昇がみられた。」

 

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁62ページ

「平成21年の一般市民により心肺機能停止の時点が目撃された心原性かつ初期 心電図波形がVF又は無脈性VTであった症例のうち、一般市民による心肺蘇生 が行われたものの1ヵ月後生存率は33.4%、1ヵ月後社会復帰率は 23.5%であ った。心肺蘇生が行われなかったものと比べ、1 ヵ月後生存率は 1.3 倍、1ヵ月後社会復帰率は 1.4倍の救命率の上昇がみられた。」

 

_10分を超えると救命率は低下する

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁68ページ

「平成 21 年の心原性でかつ一般市民により心肺機能停止の時点が目撃された症例のうち、救急隊員による心肺蘇生が 10 分以内に実施された場合の 1 ヵ月後生 存率は 13.7%~14.1%であるが 10 分を超えると 1 ヵ月後生存率は急激に低下し ている。また、1 ヵ月後社会復帰率においても同様に、10 分を超えると低下する。」

 

_3分以内に心肺蘇生を行えるのがベスト

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁71ページ

「平成 17 年~平成 21 年合計の一般市民により心肺機能停止の時点が目撃された 心原性の心肺機能停止症例のうち、救急隊員による心肺蘇生の開始時間と1 ヵ月後生存率及び 1 ヵ月後社会復帰率については、3 分以内に心肺蘇生を開始した場 合の 1 ヵ月後生存率、1 ヵ月後社会復帰率ともに高く、それぞれ、13.2%、8.0% である。心肺蘇生の開始が遅れるとともに、1 ヵ月後生存率、1 ヵ月後社会復帰 率が低下し、10 分を超えると急激に低下する。」

 

_救急医療は今後改善される

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁49ページ

救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急業務を円滑に実施するためには、消防機関と医療機関との連携が必要不可欠であり、 それぞれの地域における救急に係る諸課題について関係機関が恒常的に協議する場として、消防機関と救急医療機関との連絡協議会(メディカルコントロール協議会)を設置するよう推進してきた。平成16年中に各都道府県単位及び 各地域単位のメディカルコントロール協議会について、全て設置が完了し、 救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。」

 

_用語の定義

「平成22年度救急救助の概況」東京消防庁94~96ページ

「(2)各用語の定義について

  • 心肺機能停止

脈拍が触知出来ない、反応が無い(意識が無い)、無呼吸あるいはあえぎ呼吸 (死戦期呼吸)で確認される心臓機能の機械的な活動の停止をいう。

  • VF、VT(脈なし)症例

VF:心室細動(Ventricular Fibrillation) VT(脈なし):無脈性心室頻拍(Pulseless Ventricular Tachycardia)

AED:自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator) 小型の機器で、傷病者の胸に貼ったパッドから自動的に心臓の状態を判断 し、もし心室細動や無脈性心室頻拍の不整脈があったと判断された場合は、

電気ショックを心臓に与える機能を持っている。

  • 一般市民による応急手当

胸骨圧迫、人工呼吸等の心肺蘇生法及びAEDによる除細動の実施をいう。 ※胸骨圧迫、人工呼吸、除細動のいずれかが実施された場合に「一般市民に

よる応急手当あり」としている。

-94-●一般市民による目撃

心肺機能停止の瞬間を目撃、または音を聞いた人のことをいう。 「目撃、または音を聞いた」に該当する例は、次のとおりである。

 家族の目前で「倒れた」、「ぐったりした」等、また、物音を聞いて すぐに駆けつけたところ倒れていた場合。

 交通事故等の目撃者からの通報で、救急隊(救急隊と連携して出場 した消防隊も含む、以下同じ。)到着時には心肺機能停止状態であっ た場合。

 通報時、通報者が生存を確認できたが、救急隊到着時には心肺機能 停止状態であった場合。

  • 除細動実施症例

AED又は除細動器において、除細動が必要と判断され、実施したもの。

  • 除細動未実施症例

AED又は除細動器において、除細動が必要でないと判断されたもの、又は、 AEDを装着していないもの。

  • 救急隊等

救急隊もしくは救急隊と連携して出場した消防隊をいう。

  • 初期心電図波形

救急隊等が傷病者に接触し、最初に確認した心電図波形をいう。 ※救急隊到着前に、一般市民により除細動が行われ、傷病者の心拍が再開し た症例については、心電図波形上、VF、VT(脈なし)が救急隊によって確認さ

れないため、「初期心電図波形が、VF、VT(脈なし)」には含まれない。

  • 社会復帰者

脳機能カテゴリー(CPC)、全身機能カテゴリー(OPC)が共に1又は2で あったものをいう。

  • CPC、OPC

グラスゴーピッツバーグ脳機能・全身機能カテゴリー(The Glasgow‐ Pittsburg Outcome Categories)は、心肺蘇生が成功した傷病者のその後の 生活の質(QOL:Quality of Life)を評価するために広く用いられている 分類法であり、その項目は、以下のとおりである。

脳機能カテゴリー (CPC:Cerebral Performance Categories)

脳に関する機能を評価する分類法をいう。 全身機能カテゴリー(OPC:Overall Performance Categories)

脳および脳以外の状態も類別し、身体全体としての機能を評価する分類法 をいう。」

 

_救急車の活動範囲が広がっている

南部繁樹(なんぶしげき)(株)トラフィックプラス代表取締役吉田 傑(よしだすぐる)(株)本田技術研究所四輪R&Dセンター主任研究員赤羽弘和(あかはねひろかず)千葉工業大学工学部教授「プローブデータの分析に基づく救急車への 緊急走行支援方策の検討」原稿受理 2009年8月5日

「2008年度版消防白書によると、平成19年の救急車の出場件数は、前年より52,520件増加し、5,290,236件、 搬送人員は前年に比べ10,160人増加し、4,902,753人 となっている。救急活動時間を見ると、覚知から現場到着までの旅行時間は全国平均で7.0分(前年6.6分)、現場到着から搬送先病院までの旅行時間は26.4分(前年25.4分)となり、いずれもワースト記録を更新している1,2)。

他方では、「市町村の消防の広域化に関する基本 指針(平成18年制定)」に基づき自治体消防の広域化が推進されつつあり、各救急隊の活動範囲はますます拡大する傾向にある。」

 

_山間部では軽症者利用を減らしても時間短縮できない

元田良孝(もとだよしたか)岩手県立大学総合政策学部教授、岩手県立大学看護学部教授石井トク、 岩手県立大学総合政策学部助手堀篭義裕、岩手県立大学看護学部助手蛎崎奈津子2010年08月04日 「交通事故救急における道路と通信の時間的影響-国道 106 号の事例研究-」p-www.iwate-pu.ac.jp/~motoda/emergency.pdf

「発生~覚知の所要時間は、携帯電話の通話エリアと非通話エリアに一致する市街地部と山間部で平均6分の違いがあり、通信整備の時間的影響が明らかになった。(中略)また、積雪・凍結などの路面状況により救急車走行1㎞あたり平均約10秒、交通渋滞により同じく平 均10~15秒程度の時間的影響が明らかになった。」

 

_有料化の問題点

2005年4月15日 全日本民主医療機関連合会 会長 肥田 泰「救急出動「有料化」、救命・救急業務の「民間委託化」に反対し、安全・安心の救急医療拡充を要求する」

「2003年に内閣府が実施した「消防・救急に関する世論調査」では、「高齢化の進展に対応するため、出動件数の増加に対応できる救急体制を充実する必要がある」という意見について、「賛成」が91.3%と大半をしめている。財政措置を講じても救急需要への体制整備をはかることが求められている。しかし、既にいくつかの自治体で、財政事情等を理由に「有料化」も含む検討がすすめられ、住民からも不安の声が寄せられている。

 「有料化」の問題では、高齢者及び低所得者層の利用制限が拡大する危険性が予測されることである。「有料化」の弊害は、健康保険の一部負担金導入後の経過を見てもあきらかなように、患者の受診抑制が強まり、症状が悪くなってから医療機関にかかることによって重度化し、結果的に国民医療費の増大につながるという側面がある。

 「有料化」は患者・国民の受療権を侵害するとともに、救急需要増加の調整策として導入することが適策でないことを指摘する。」

 

_救急患者はふえているのに、医療機関や医師の数は不足している

円城寺雄介(えんじょうじゆうすけ) 佐賀県健康福祉本部医務課医療支援担当主査2011年10月7日「"救急患者のたらい回し"を防げ!―iPadを使い救急医療の可視化を実現した佐賀県

「いわゆる“救急患者のたらい回し”が大きな社会問題となって5年以上が経過しようとしている。しかし,救急車で運ばれる人の数は年々増え続けており,全国的には10年前より100万人も増えているにもかかわらず,救急患者を受け入れる医療機関や救命医師の数は依然として不足が続いている。

その結果,119番通報から病院搬送までの時間は毎年のように過去最長を更新しており,こちらも全国的には10年前よりも9分長い時間がかかっている。さらに,搬送時のトラブルや訴訟の件数も増えていることから,医師の間でも救命医師を希望する者が年々少なくなっており,人手不足のため夜勤した救命医師がそのまま日勤をするケースも少なくない。救急医療の現場は疲弊し,まさに崩壊の危機に直面している。特に若い医師が救命を敬遠するという状態が続けば,10年後には現在最前線で活躍する救命医師たちも年齢的・体力的に第一線を支えることが難しくなってくる。救命医師がいなくなってしまえば,自分や自分の大切な人たちに何かあった場合にも,救急医療サービスを受けることができなくなってしまう。そんな日がやって来るかもしれない。」

 

_30秒でも短縮できるのは重要

円城寺雄介(えんじょうじゆうすけ) 佐賀県健康福祉本部医務課医療支援担当主査2011年10月7日「"救急患者のたらい回し"を防げ!―iPadを使い救急医療の可視化を実現した佐賀県

「実際に運用開始した4月のデータを分析したところ,33.2分となっており,2009年実績の33.7分と比較すると約30秒の短縮効果が出ている。大したことがないように思われるかもしれないが,救急医療における30秒という時間は大きな意味がある。短縮できたこの30秒で,例えば気道の確保や点滴などの処置を行うことができる。この処置が生死の明暗を分けることもあり,またその後の社会復帰までの時間に与える影響は非常に大きい。」

_シンガポールの救急隊は日本より遅い

熊野哲大(くまのてつひろ)シンガポール事務所所長補佐「シンガポールの消防・救急行政」(自治体国際化フォーラム2004年5月)

「到着時間目標の設定:火災及び救助を求める連絡には8分以内、救急では11分以内に現場に現場に駆けつけることを目標とするもので、目標達成率80%以上を目標に取り組んでいる。」

 

_無料低額診療制度は一時的な措置

民医連ホームページ「無料・定額診療制度 制度の説明http://www.min-iren.gr.jp/topics/muryou/seido.html

「無料低額診療事業とは、低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行う事業です。厚生労働省は、「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者が無料低額診療の対象と説明しています。
 すでに無料低額診療事業を実施している北海道勤労者医療協会では、窓口での一部負担金免除の基準として、(1)全額免除は1ヶ月の収入が生活保護基準の 概ね120%以下(一部免除は140%以下)と内規で定め、(2)患者からの申し出や患者の生活困窮を職員が知った場合に医療相談員が面談し、公的制度や 社会資源の活用の可能性を検討したうえで、適合を判定することにしています。また、この制度の適用は生活が改善するまでの一時的な措置であり、無料診療の場合は、健康保険加入または、生活保護開始までの原則1ヶ月、最大3ヶ月(一部負担の全額減免と一部免除は6ヶ月)を基準に運用しています。」

 

_高齢者の症状は典型的でない

2006年長谷川浩(はせがわひろし)杏林大学医学部高齢医学「高齢者救急医療の現状と将来展望」日老医誌

高齢者救急の特殊性

3,症状が典型的でないことがある(無痛性の心筋梗塞 無熱性の肺炎など). (中略)

6,ベッドからずり落ちる程度の外傷で大腿骨頸部骨折,脊椎圧迫骨折や慢性硬膜下血腫などを発症することがある.」

 

_心疾患は日本人の死因の第1位

2000年9月10日平盛勝彦(ひらもりかつひこ)岩手医科大学附属循環器医療センター「心疾患の救命救急;

院外での処置が生死を分ける」(日本内科学会雑誌第89巻第9号)

「心疾患と脳血管疾患からなる循環器疾患は日本人の死因の第一位である.また,急死に至る疾患の第一位が循環器疾患であり,そのうちもっとも多いのが心筋梗塞症である.しかし,的確迅速な処置によって救命できる可能性が大であるのも心疾患に特徴的である.

心疾患による重篤な発作の大部分は院外で発生し,院外で致死的事態を現す.搬送されてくる患者さんを病院で待っていて行う救急診療では多くを救えない.「 院外での救命救急システム」が必須であり,これとの連動を欠いた救急診療の効用は小さい.このシステムが整えば,救命されて社会復帰できる症例は現況の10倍を超えると期待される.また,死が心疾患ほどには急でない急患をもよく救えるようになる.」

 

_心疾患は的確で迅速な救命処置で多数を救える

2000年9月10日平盛勝彦(ひらもりかつひこ)岩手医科大学附属循環器医療センター「心疾患の救命救急;

院外での処置が生死を分ける」(日本内科学会雑誌第89巻第9号)

「救急医療の対象のうち, 死が目前にある疾患としては心疾患が最多である.しかしこれら心疾患は,的確かつ迅速な救命処置によって多数を救えるものでもある.」

 

_心疾患の死亡例全体の70%は病院外で起こる

2000年9月10日平盛勝彦(ひらもりかつひこ)岩手医科大学附属循環器医療センター「心疾患の救命救急;

院外での処置が生死を分ける」(日本内科学会雑誌第89巻第9号)

「急性心筋梗塞症は,そのために急死することが最大の特徴であり,また問題である疾患である.救急診療の備えがあるCCU(coronary care unit)へ収容された心筋梗塞症例の致命率は10%以下である.しかし,本症全体の致命率は35%程度であり,その死亡例の半数以上は発症後1時間以内に院外で心室細動を生じて死亡するものである.死亡例全体の70%程度は院外での死亡である.したがって,CCUまたは救命センターへ生きて搬送されてくる症例を待っていて行う救急診療では多くを救うことはできない.

急性心筋梗塞症例の救命には院外での救命救急システムの整備が必要である.」

 

_内科的疾患は重症かどうかの判断が困難

2000年9月10日平盛勝彦(ひらもりかつひこ)岩手医科大学附属循環器医療センター「心疾患の救命救急;

院外での処置が生死を分ける」(日本内科学会雑誌第89巻第9号)

「重症度の診断が一目瞭然であることが多い外傷とは異なり,内科的疾患では,その重篤さの診断が容易ではない.初期の所見を見逃して, 直後に致死的事態を生じさせてしまうことが稀ではない.内科的疾患の救急診療には初期救急が重要であり,その診療水準の高度化が必須かつ緊急の課題である.」

 

_脳卒中と心疾患は急性期の治療で寿命が延びる

2007年6月11日野々木宏(ののぎひろし)他国立循環器センター心臓血管内科「心疾患克服への将来戦略」(IRYO Vol.62 No.3)

「人口高齢化と食生活の変化により,循環器疾患の疾病構造が変わり,虚血性心疾患, 心不全, 不整脈疾患が増え, 患者数や死亡数が増加している. 脳卒中と心疾患の死亡を合わせると, 悪性腫瘍による死亡数と同等である. 単一臓器の疾患としては, それぞれ最大死因といえる. 特徴は急性期に治療が奏功すれば, 救命率が上昇し健康寿命の延長につながる疾患群である.今後10年間の戦略を考える上では,脳卒中と心臓発作の死亡率を25%削減し,発症の1次, 2次予防,さらにプレホスピタルから超急性期における治療法の確立が急務の課題であり, QOLの改善には再生医療等による血管新生や心筋再生による予後の改善等が必要である.」

 

_急性心筋梗塞では院外の死亡を低下させることが重要

2007年6月11日野々木宏(ののぎひろし)他国立循環器センター心臓血管内科「心疾患克服への将来戦略」(IRYO Vol.62 No.3)

「人口高齢化と食習慣をはじめとする生活様式の変化により, 循環器疾患(心疾患, 脳卒中)による死亡は増加している. とくに虚血性心疾患の代表的疾患である急性心筋梗塞症では, CCUに入院した場合の予後は前述したように著明に改善した. しかし, 院外での死亡はなお高率であり,超急性期における致命率を低下させるために必要な対策として, プレホスピタルから超急性期における早期診断法と治療法を確立し, 高度先端的治療へ継続させることが必要である.」

 

_循環器疾患による救急搬送は今後急増する

2003年横浜市立大学医学部公衆衛生学大重賢治他「循環器疾患による救急搬送の増加」

「循環器疾患による救急搬送患者数は、2015年には、2001年現在の1.4倍、2030年には1.7倍に達すると予想された(中位推計)。循環器疾患の救急医療需要は、都市の人口の高齢化に伴って、今後急激に高まると考えられる。」

 

_循環器疾患は速やかな診断と治療が必要

2003年横浜市立大学医学部公衆衛生学大重賢治他「循環器疾患による救急搬送の増加」

「循環器疾患は大きく心臓系の病気と脳血管系の病気に分けられるが、どちらも速やかな診断、治療が要求される領域であり、また、その治療には高度に専門的な知識、技能が必要とされることか多い。循環器疾患による救急患者の急激な増加は、地域の救急医療体制に大きな影響を与える可能性がある。」

 

_救急医療の効果的、効率的な運用が必要

2003年横浜市立大学医学部公衆衛生学大重賢治他「循環器疾患による救急搬送の増加」

「特に循環器疾患の救急医療では数分の治療の遅れが重大な結果を招くことも多く、医療資源を効果的でかつ効率的に配置することが必要である。」

 

 

 

 

 

_救急隊は年々増強されている

総務省「平成22年救急・救助の概要」

平成23年4月現在の救急隊数は 4,977隊(前年4,910隊)で、年々救急隊数は増加しています。

「器具による気道確保、除細動、静脈路確保及び平成18年4月より実施可能となった薬剤投与といった救急救命士救急救命士法に基づいて行う救命処置件数は合計で105,654件(対前年比 8.7%増加)にのぼり、年々増加しています。」

 

_生活保護世帯は医療扶助で医療はすべて無料で受けられる

ウェブページ「医療保険制度」

「各種健康保険などでも保障されない者に対し最後の砦として医療保障をしてくれる制度で、自己負担なしに必要な医療を全額公費で受けることができます。」

 

_近くの救急車が出払っていて到着時間が遅れている。

平成24年1月23日東京消防庁報道発表資料

「出場件数が増加したことにより、現場に最も近い救急隊が出場する割合が減少したことが現場到着までの時間が伸びた主な要因と考えられます。」

 

「救急出場件数が多くなれば、必然的に遠くの救急隊が出場する確率が高まるため、現場への到着時間が遅れてしまい、救える命が救えなくなる恐れがあります。」

 

_生活保護も切り下げられた

 しんぶん赤旗2009年2月20日

「そのうえ、国民生活の最後の命綱である生活保護さえ切り縮められました。老齢加算の廃止で、「朝はパン一枚、昼はうどん」「暖房費節約のため、ストーブをつけず布団に入る」「風呂の回数を減らす」など生活の根幹まで切り詰めざるをえない実態です。(〇八年一月、全日本民主医療機関連合会の調査報告)」

 

_生活保護の医療扶助の範囲

厚生労働省生活保護の医療扶助について」

生活保護受給者は、国民健康保険の被保険者から除外されているため、ほとんどの生活保護受給者の医療費はその全額を医療扶助で負担。」

「医療扶助は、①診察、②薬剤又は治療材料、③医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術、⑤居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護、⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護、⑥移送の範囲内で実施。」

 

_くも膜下出血の症状は風邪と似ている場合がある

東京女子医科大学脳神経外科加川瑞夫(かがわみずお)「くも膜下出血と頭痛」(平成5年1月10日)

「また急性上気道感染症(風邪症候群)に伴う頭痛,悪心(おしん)・嘔吐にも時にくも膜下出血による頭痛と紛 らわしいことがある.逆にこれらの病態を認める患者の中にくも膜下に出血による頭痛の患者が含まれる危険性を認識すべきである。」

 

_くも膜下出血の初期には安静が重要

EBMに基づくクモ膜下出血診療ガイドライン (2003)」

「発症直後は安静を保ち、鎮痛、鎮静を図ります。 重症の場合には呼吸や心臓の機能にも注意を払わねばなりません。」

 

 

 

 

 

 

 

_トリアージで60%は減らせる

国立がんセンター中央病院 土屋了介他平成20年8月24日「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会報告書骨子(案)

「東京では、消防庁、医師会、救急医学会が連携して、通信司令室の一部で、救急搬送の必要性についてプロトコールに従ってトリアージする電話相談事業を始めた。同時に救急隊による現場でのトリアージを始めており、救急車による 緊急搬送が必要ない場合には、その状況を説明し自己通院を促すと、60%くらいは同意が得られ、救急車搬送していない。」

 

_東京都のトリアージは1000回の出動に1件が対象に過ぎない

日本医科大学救急医学主任教授山本保博(やまもとやすひろ)2008年12月10日「救急医療を再構築するための提言」(日救急医会誌2008 19:1123−9)

東京消防庁の試みでは,約1,000回の出動に1件がその対象であり,その場合に6割の傷病者が搬送しない ことに同意している。」

 

_費用の負担が受診を抑制させる

村田千代栄 浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座 助教「日本の高齢者でも低所得や自己負担率が受診抑制と関連」2010年

「2006年調査当時は、高齢者の自己負担率が 70歳未満が3割、70歳以上は1割であったため、年齢階層別に受診抑制理由を検討してみた。その結果「費用がかかる」が、65〜69歳では35.8%、70歳以上では20.1%と、自己負担率の高い70歳未満で、費用を理由とした受診抑制が多いことが確認された。」

 

_救急車の出動件数に比べて、搬送人員数は少ない。

日本医科大学救急医学主任教授山本保博(やまもとやすひろ)2008年2月25日「安心と希望の医療確保ビジョン」第4回議事録

「救急出場件数が約570万であるのに対し、搬送人員数は470万~480万であり、9%が現場に行っても患者がいない状態である。(理由は辞退、いたずら、酩酊していた等)」

 

 

_心停止状態では、1分で10%生存率が下がる

日本医科大学救急医学主任教授山本保博(やまもとやすひろ)2008年2月25日「安心と希望の医療確保ビジョン」第4回議事録

「H7~8年から搬送件数が非常に増えている。救急車の現場到着所要時間も15年間に5分半から6分半にのびている。心停止状態では1分で10%生存率が下がるためこれは大きい。」